中編
04
翌日から教室には宇佐見と大森が来るようになって、冬休み明けには昼休みも一緒に過ごすという約束を取り付けていた。
そこには当たり前のように俺も誘われて、大森は言われなくとも来るらしいから仕方なく頷いた。
正直二人が幸せそうなのは良いけどそれを見たくはなかったし、昼休みは一人で過ごそうと考えていたから少し遣るせなさを抱えた。
それでも幼馴染みが幸せ一杯に笑うから、自分の選択が最善だったのだと言い聞かせては大森に八つ当たりしながら冬休みまでの数日を過ごすしかなかった。
冬休みに入って心底良かったと思ったのは初めてかもしれない。今までとは違って、カメと会わなくなるからという真逆の理由が生まれた。
宇佐見と出掛けるんだ、と嬉しそうに言っていた昨晩の幼馴染みを思い出しながら静かな部屋のベッドに転がった。
なんでこんな時にバイトは休みで親も居ないんだろう。シフト増やそうかなとも思ったが、亮平さんの言葉が浮かんでその気持ちはすぐに消えた。単純。
───自分がカメに対する気持ちに気付いた当時、好きになってしまった事を悔いた。何度も何度も悔いて、それでも好きだった。
同性なんて有り得ない。そう思うのが「普通」で、ひたすら隠し続けて頼れる親友の立場を守ってきた。
なのに幼馴染みが恋をしたのは同性で、同じ学校の同級生だった。
好きになるならこっち向けよ。向かせてやろうかと思っていたのに、アイツがあまりにも必死に本気で恋をする姿を見ていたら手を伸ばす気が失せた。
危うい瞬間は何度かあったけどそれでも壊したくないものが頭に浮かんで耐えるばかり。
なんで俺じゃなかったんだろう。ずっと一緒に居たのに、こんなに近くに居るのに、好きな奴は別の男を見ていて近いのに遠い。
亀山春彦は男女問わずモテる。その見た目や明るい性格は人好きするものだったから、嫌われる方が不思議に思うほど。
大森だって宇佐見だって開けっ広げにあいつを好きな気持ちを出している。知らない所で幼馴染みに恋慕を抱く人も居るだろう。
でも俺はこの心中を見せられやしない。
相談も、宇佐見に関しての不安も、俺にだけ向けてくれるのにその感情だけは向かない。
それでも良いと思った。
宇佐見は良いやつだし、カメも幸せそうだからこれで良いんだと心底思うし本心なのに、なんでだろう。
なんで、こんなに痛いんだ。
「………、」
ぼんやりと天井を見上げていると、近くに放った携帯が震えた。
一人で居たら泣きそうで、でも誰かを利用するなんて出来ない。そんな矛盾した心を見透かすようにあの人は俺に存在を知らせてくる。
ここにいるって。あの優しい声で、いつもそうやって連絡を寄越してくるんだ。
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