中編
トオルについての話。
概要【康之がトオルを持ち帰って来た後】
注*会話文
「なんか、ずっと住んでたはずなのに変な感じする」
「おかえり」
「……、ただいまっ」
「ん。 トオルはいつから住んでたとか、事故前の事を覚えてるのか?」
「何となくね。 ここ来たのは十八になってすぐだったし、事故の時はバイクで一人旅みたいな事してたと思う」
「じゃあ一年も居なかったのか」
「そうなるかな? だから余計にここでユーレイになって目覚めた事が不思議。思い入れ出来る前に居なくなっちゃったし」
「家族仲とかはどうだった?」
「良かったよ。元々オレはお母さんの連れ子でさ、父親は産まれてすぐ亡くなって、お母さん一人で結構稼いでたから苦しくは無かったみたいだけど、そのあと小学生くらいに義父さんと会って結婚した。
義父さんも社長やってたみたいで、義父さんの兄弟はオレがあんまり好きじゃなかったと思う。
病院での連絡先ってその義兄弟だったんだけど、目覚めたらオレの荷物送ってきてもう関わりはないよーって話は病院で聞いた。
オレが目覚める五年前に両親が亡くなってて、お母さんの遺産?で入院費賄ってたみたい。オレが事故に遇う前から義父さんも少しずつオレの口座に入れてたみたいで、一応いまも残ってる。
義兄弟に嫌われてはいたけどオレの大事なもの残しておいてくれたから、オレはどうとも、感謝はしてるかな」
「そうか、」
「それにさ、康之さんと居られるから、身元引き受けるって言われなくて良かったって思っちゃった…」
「罪悪を感じる必要はない。そうなっても俺はお前を連れていくつもりだったから」
「なんでそんなかっこいいの…っ」
「俺のわがままだ」
「我が儘じゃないよう、もっと言って!」
「お前もな」
「じゃあ…、ぎゅうしよう」
「毎日?」
「ホント好き」
「好きなだけどうぞ?」
「うわぁ…ドキドキするー…。とりあえず一息つくのにぎゅうして座ろ」
「はい、こっち」
「康之さん後ろから抱き締めるの好き?」
「別に前でも良い」
「…前は恥ずかしいので後ろからお願いしまーす」
「だと思った。 そういえばお前があの町に引っ張られたのは肉体があったからか?」
「あー、たぶん。ずっと一緒に居た康之さんがオレの肉体の近くに行ったから引っ張られたのかも、って考えると凄く素敵じゃない?」
「あの宿は同じ課の社員が教えてくれたんだ」
「成るべくして成った、みたいな?」
「そう思っても良いんじゃないか」
「んふふふ、 あったかいなー」
「……そうだな」
END
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