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中編
10
 


 認めて祝ってくれて、信じてくれる人がいる。たぶん並木さんと宮田君だから、翔君との交際を言おうと思えたんだ。



「ありがと並木さん。宮も、教えてくれてありがとな」
「対策の役に立つならと…お節介かもと思いましたけど」
「まさか。な、翔君」
「うん。ありがとう二人とも」



 並木さんは微笑みながら頷いてくれて、宮田君は照れているのか首筋を掻いている。あれは手癖なのかなぁ。

 デザートを頼んでドリンクバーで温かいコーヒーを調達し、さすがに対策なしだといざという時に戸惑うのでそこらへんの話をすることにした。



「つっても、マネージャーも翔君はしばらく夕勤なしって言ってたしなぁ」
「代わりに俺が出るんですよね」



 そこである。
 仕事面で支障はないんだけど、小山君の気持ち的にどうなんだろうなと考えたのだ。
 フラストレーションの事だ。諦めるか、ストレスになるかが分からない。



「高校の友達と言っても、大学で離れてから連絡してないし、向こうは覚えてるか分かりませんけど。仲良くしてる所を見てるから話し掛けてはくると思うんです」



 さすがに友達だったから覚えているとは思ったが、恋多き男である小山君は伴って人間関係が濃い。短期間で色んな人と関わっていると、疎遠になった友達の一人くらいは記憶の中で薄くなるというのは否めない流れだ。
 確かに、宮田君は俺と翔君に抱き着くくらいなついているし、逆に俺らも可愛がっている所を見ているわけだから、翔君について聞いてくる可能性は大きい。
 並木さんに関しては、夜勤のお母さん的位置に居るのであまり突っ込んだ事は聞いてこないような気がする。



「告白されてもばっさり切って断れば、諦めるかもしれません。俺の時はそうでした」
「今まで断られたことがなかったのかね」
「俺の知る限りは。この人が好きって言ったら必ず付き合っていましたし」
「なるほど」
「ただ、」



 ふと言葉を切った宮田君は、別の所へ視線を流した。ちょうどデザートが運ばれてきたらしくて、すぐにテーブルに甘味が並ぶ。
 アイスもあるから、食べながら進めようと宮田君は笑う。



「俺の時は断れば一度で止めましたが、告白した時、かなりしつこかったです」
「というと」
「放課後一時間以上は帰らせてくれなかったんですよ。最終下校時間になってやっと諦めたような感じでしたね」
「うわあ…」
「一時間以上…」



 宮田君の言葉につい翔君と同時に声を上げた。

 曰く、その時間の中で十回以上は告白されたが尽く断ったらしい。
 告白する方もされる方もしんどいな。



「俺の場合は小山君は友達だし、色んな人と付き合ってる姿を見ていたし話も聞いていたから、絶対嫌だって何度も言いました。そのあとも相変わらず友達でしたけど」



 しばらくフリーだったが、高校卒業間近では彼女がいたと宮田君は笑う。本当に恋多き男である。



「恋多きって本当に居るんだな…」
「多すぎだけど」



 俺の呟きに、溜め息と共に素早く突っ込んだ翔君はパフェの半分を食い進めていて、話を聞きながら黙々と食べていた姿が思い出される。
 これで夜勤メンバー以外の人が居たら終始無言無表情だっただろうなと思うと、翔君も夜勤メンバーが好きなのだろう。喜ばしい限りである。



 


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