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中編
03
 


 結構困惑しているらしいマネージャーに、詳しくは後ほどと返事をする。
 文にし難い事もあるだろうし小山くんのことは直接話した方が早い。

 しばらく夕勤ないのか、と安心する一方で、週一という定期的な夕勤シフトがあるからこそ今の状態で止まっているなら、夕勤がなくなったら小山くんどうするんだろうな、という不安もある。
 すれ違いだしみんな居るから強引にどうこうはないだろうけど、フラストレーション溜まって爆発したりしないかな。
 彼の人となりはまだ分からないし、何とも色々な可能性が浮上してしまうせいで考えが纏まらない。


 成人したばかりの二十歳で大人と言い難いのは自分の経験上のことだけでも、案外その印象は間違えてない気もする。十代の勢いと二十代前半の勢いはあまり変わらないし。
 まあ、一概には言えないからこその心配なんだけど。
 どちらにせよ危害なく大人しいままなら好こうが嫌おうが構わないのだ。



「純粋にアタックしてくるんなら問題ないけどなぁ」
「うん」



 お互いに考えている事は大差ないらしい。
 強行されるより純粋なアプローチの方が翔君は楽だろうし、正直どちらでも翔君なら対処出来るんだろうけど、面倒なのはお断りなのだ。

 なんやかんやと時間が過ぎていて、準備して職場に向かうことにした。
 マネージャーがどんな感じになっているのか気になるし。











 金曜の夜勤は他の平日より少し前後が忙しい。入室と退室が多い出勤すぐと、上がり近い朝のモーニングと退室が重なるからだ。
 うちのモーニングサービスは平日限定だが、土曜日の朝まで適用される。
 土曜休みな客は大抵頼むから予約の紙が沢山あって、時間も重なる。
 特に6時と6時半の予約が多く、四組ほど時間が重なるくらいなら毎回のことだ。
 でもそこは翔君と一緒だから、掃除とフロントや食事提供に問題ない。


 出勤してきた時には事務所に夕勤メンバーは誰もいなくて、フロントにはマネージャーだけがのんびり座っていた。



「おはよーございま、す…うわあ」
「あー…、おはよう」
「マネージャー顔死んでる」
「河内…お前なんでそんなモテる。男に」
「さあ」



 疲労を隠せないらしいマネージャーは溜め息をついた。
 俺のと一緒に荷物を置きに行ってくれた翔君を見送って、フロントに入る。
 パソコン画面を見ると入室数はまあまあ、清掃部屋も片付けていってくれてるようだ。



「どうですか小山くん」
「あいつヤバイ」



 lineの文と同じことを言ったマネージャーは、じっと俺を見ていて説明を求めてくる。
 誰も降りてこないから大丈夫かと、戻ってきた翔君を視界に入れて口を開く。



「最近落ちたらしいですよ、小山くん。翔君のレアな微笑みを見て」
「ちょろ過ぎるだろ」
「ちょろさに関しては俺も耳が痛いんですけど」
「お前は別。元々仲良いだろ」
「やだ嬉しい」
「照れんな」
「まあ、純粋に好きでアタックすんなら翔君も構わないらしいですけど、前にあったように雰囲気に煽られて強行とかになると流石に困りますね」



 それだよな、と天井を仰いで溜め息をつくマネージャーに苦笑いが浮かぶ。
 流石にそう無いとは思うけれど、どんなことでも可能性として隅に置いておく事は大切だ。小山くんのように仕事覚えが早く動きも申し分ない人ならば、切るのは勿体ない。
 ただ問題を起こせば誰であろうと容赦なく切ることが出来て、正しい判断をするマネージャーだからこそ、躊躇わずに委ねられる。


 


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あきゅろす。
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