中編
9時から就寝、起床から。‐01
甘いものが食べたい、という翔君の欲求に、ファミレスで二人して甘いものを頼んだ。
ドリンクバーを付けようか悩んだけど、たかだか一時間くらいなら必要ないと水とパフェで済ませる事に。
翔君がフルーツパフェで俺がモンブラン。無表情ながらも満足そうにパフェをつつく姿に癒されながら、アイスを少し貰ったりモンブランを食べさせたりして、周りの目なんか気にしない二人だから、会計時に店員さんが不思議そうな目をしていたのが寧ろ不思議だった。
職場から自転車で二十分くらいの場所にある駅前の大型商業施設は、開店から客が多い。けれど広さがあるから窮屈でもない。
とりあえずウィンドーショッピングを楽しんで、面白雑貨屋みたいな場所で一時間くらいふざけて、施設内のゲームセンターに入った。
平日の朝からゲームセンターにいるのは幼子を連れた親とか、年寄りが殆どだ。
「翔くんキャッチャー出来る?」
「余裕」
「断言された」
ゲームセンターなイメージがないからか、翔君の新たな面を見つけた。
試しにお菓子のクレーンゲームをやってもらったら、まさかの一発ゲットで度肝を抜いた。
スナック菓子の大袋を引きずり出した翔君は、近くにあったデカイ袋にそれを突っ込んで「UFOキャッチャーは得意」だと少し笑って見せた。その笑みがニヤリといった雰囲気だったから、翔君イケメン過ぎると笑うしかない。
「あ、じゃああれとか取れんの?」
袋を抱える翔君に促して、近くにあった機械に近寄る。
そこにはいかにも難易度が高そうな、大きい猫のクッションが鎮座していた。
俺が財布から硬貨を出して入れていると、翔君はじっとそれを眺めてから、左右をさっと確認して、「一回では無理」と言いながら硬貨を追加し、五百円で六回の徳用でクレーンを動かした。
クレーンは迷いなく動き、二本の突っ張り棒の上に乗せられたクッションを横にずらした。
二回目でさらに横にずれたクッションを見て、俺は何故かハラハラしていた。だって明らかにクレーンは力が弱くて、普通に持ち上げようとしたらするっと滑り落ちるレベルだ。
それなのに翔君は持ち上げる気配なくただずらしていって、なんと三回目でクッションを突っ張り棒の間から滑り落としたのである。
「うわ、え!翔くんマジかすげえ」
「あ、これ裏側肉球」
翔君がずるりと取り出し口から引っ張り出したクッションは、愛らしい顔と肉球が裏表についていて、肉球はふよふよとしてクッションと感触が違っていた。
すげー、と心底感心していると、翔君はクッションを俺に預けて近くにいたスタッフを呼んできた。
「これ回数余っちゃったんで、出したいんですけど」
「え、三回で取っちゃったんですか?凄いですね」
どうやら見ていたらしく、男性スタッフは「はー」と感心しながらも快く返金に応じてくれて、ついでにセルフサービスで引っ掛かっている袋よりふた周りデカイ丈夫そうな袋をくれた。
「翔くんキャッチャー強すぎる」
「暇潰しにやってたら出来るようになった」
クッションを抱えながらもふもふしてる翔君が可愛い。やばい。
なんか頭を撫で回したくなる雰囲気の翔君と、またゲームセンターの中を回って、レーシングゲームや音ゲーをしてひたすら楽しんだ。
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