[携帯モード] [URL送信]

中編
06
 


 在室と空室表示だけになった画面を確かめ、端のパソコンで客室に映っているのと同じインフォメーションを弄る翔君に座ったままゴロゴロと近寄る。
 翔君が見ているのはメニュー画面で、ラブホにしては豊富な食事系やおつまみが流れていく。

 イベントが近づくと、グランドメニューとは別に期間限定メニューなんかが出てくる。限定メニューは平日宿泊限定一品無料や平日ランチ半額の対象外でそれなりな金を取られるものの、珍しさに頼む客は結構いる。

 去年の冬に出てきた限定メニューの中に、ヒレステーキとかサーロインステーキがあったのは衝撃だった。同時ではなかったが一年の括りではふたつともあって、マジかよと思ったのはまだ記憶に新しい。

 冷凍食品の出来合いチャーハンとかとは違って、冷凍ではあったけど、出るかも分からないのに何個か解凍しておかなきゃならないし、焼きも盛り付けもこっちでやらなきゃならない。その時は台所にワインとかステーキソースとかあったなあ。ヒレはまだマシで、サーロインはとにかく焼き具合が面倒過ぎた。
 あとは冬ならではの暖かメニューだけど、揃って全部面倒なものだった。



「今年もステーキあると思う?」
「思う」
「だよなあ」



 一食二千円くらい取られるのに、出るときは出るから忙しいときはクソだなと思う。
 試食で一回は作ってみるんだけど、ああいうのはちゃんとした店でちゃんとした料理人に調理してもらうべきだ。
 サーロインに至っては、専用の鉄板に盛り付けなきゃならないとかいう何その謎のこだわりみたいな気持ちになる。



「今度マネージャーに聞いてみよ」
「うん」



 確か来週あたり夕勤で出るっぽいし。
 パソコンの画面はいつのまにやら最新映画情報に移っていて、CMでも流れないようなB級ものやアニメの劇場版なんかが表示されている。

 専用チャンネルでアニメやドラマやバラエティなどが延々流れているから、暇すぎる時は備え付けの番組表を確かめて観たいものがあれば観たりしてる。
 なんかやってるかな、と客室に置いているのと同じ番組表を引っ張り出して、今の時間の欄に目を通す。



「んー…、興味をそそられない」
「似たようなものしかない」
「それなー」



 翔君も番組表を覗き込んできて一緒に見ていると、インフォメーションを映していたパソコンの上の機械からピピピ、という音と共に紙がぺろりと出てきた。



「モーニングかメシか」



 翔君が立ち上がって紙を抜き、ひらりと見せてくれた。



「カツカレー」
「うわ、夜中にヘビーだな」



 宿泊で入っている客が注文したものだった。一応、宿泊や休憩の利用名簿でウエルカムサービスや一品無料を利用しているかどうかを確認すると、どちらも既に利用している。
 まあ常連だし、電話じゃないから加算でいいんだろう。
 夜中にカツカレーってすげえな。
 いやよく出るんだけど、起きて働いてるこっちからすりゃカツカレーとか食えるけどな。


 とりあえず作るか、と台所に二人で向かい、休憩場側の冷凍庫からカツを出して、翔君が揚げ物用鍋を火に掛けてからシンク横の冷蔵庫の下段にある冷凍ご飯を取り出して。
 盆とカツカレー用の皿、スプーン、一緒についてくる簡単な粉末スープをカップに入れて、レトルトのカレーを水を張って火にかけている鍋にイン。
 福神漬けを出しておいて、油が適温になるまで待った。



 


[*←][→#]

15/42ページ

[戻る]


[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!