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中編
番外 : cherish.‐槙野新‐01
 


 ただ一人ひたすらに仕事と向き合うその姿が、その時やけに小さく見えた。

 いつしか湧き出したその感情に名前を付けるなら、たぶん───







 Refract ‐cherish‐槙野新







 最初は興味なんてなかった。
 学園に来たのも親が決めたからで、好んでこんな異世界に行きたいなんて思わずにその存在さえ知らないまま、寮ではない高校に入って過ごしているはずだった。
 事実、この世界は歪んでいる。
 機会的同性愛が当然のようにそこにあって、幼い頃からここにいればそれに違和感すら抱かないだろう。

 だからこそ、煩わしいそれらを遠ざけては一人で悠々自適に過ごしてこの学園生活が終わるのを待ちわびていた。



 けれども異変は突然にそこに現れる。




「───はじめまして、平川真澄でっす!同じクラスはもうみんな友達なんだ、名前で呼んでくれよな!」



 高らかに場を抜ける声とは裏腹に、その外見は目元まで隠れる黒髪は癖と量感があり、そこに上乗せするように存在する大きな眼鏡は、小さい顎のラインに釣り合っていない。
 カッターシャツの第一ボタンは外れているし、ブレザーも開いたまま。
 声と服装に違和感はないが、それよりもインパクトがある頭部のせいで全体的に違和感しかなかった。

 口許は笑っているが、目元が殆ど見えないために表情がいまいち把握できない。


 クラスの連中はその見た目と声とのギャップに衝撃を受けながらも、見た目第一な思考回路から弾き出されたのは誹謗中傷、さらに罵倒。
 たかがクラスに生徒がひとり増えたくらいでなにを騒ぐ必要があるのか、俺にはさっぱり理解できない。
 嫌なら関わらなければいいだけ。
 何か感情を刺激するものがあるということは、興味があるという事実に他ならない。

 けれど、たかが転入生ひとりと思っていた俺は、転入生に気に入られてしまったすぐ後から知った奴の交遊関係の異様さに「たかが」などとはもう思えなかった。



 学園の異常さは、まず眉目が良い生徒に対しての崇拝に似たアイドル扱いから同性愛に関してが割合を占めている。

 特に学園においてかなりの権力を持つ役職の生徒会役員全員と風紀委員のトップ二人に関しては、呆れて言葉も見当たらないくらいの人気。
 容姿が良いとくれば、勝手に作り上げられている風習のような組織、親衛隊が発足され、良い組織は対象と仲が良く見守り隊のような関係だが、悪くなれば崇拝団体となる。

 崇拝対象をまるで神にでも見立てているかのように、容姿が良いと言われる生徒、または同じ役職者や教師以外の生徒が崇拝対象に近づく事も話し掛けたりすることも許されず罵倒され、さらに触れたりでもしたら制裁と言う名の八つ当たりや暴力、最悪強姦なども厭わない。

 伴ってか対象とあまり信頼関係は作られておらず、さらに悪循環。
 そんな関係性が蔓延るこの学園に、平川という異質が来たことは必然だったのかもしれない。


 平川真澄は、見た目は不潔と言われているが実際べつに臭うわけではない。
 悪い評価を上げるなら声が大きすぎる、利己的である、屁理屈である、幼稚である。
 良いと見るのなら、素直、純粋、正義感が強い。

 それでも学園生徒と相容れない平川は、悪い意味で有名になった。


 その大半を占めるのは、平川の交遊関係にある。
 まずは、会長を除く生徒会役員。
 委員長と一部の委員を除く、副委員長含めた風紀委員。
 クラスの担任、親衛隊がある生徒数名。
 それらの奴等がなにをトチ狂ったのか、平川に惚れたのだという。
 本人たちが自分の立場もわきまえず、大勢の生徒が利用する食堂で似たようなことを言っていた。

 なにがあって集まったのかは知らないが、平川の周りには常に人気者と呼ばれる生徒が確実にいる。
 そして俺も、他人からすればそんな連中と同じように見られていることも、知っていた。
 知っていて放置した。

 ただひとつだけ気になっていることは、常に側にいる生徒会役員。
 会長以外がへばりつくように側にいるために、普段から仕事が多い生徒会が機能しているのかということ。


 その真相は、平川に引っ張られて生徒会室に入った時に知った。


 

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あきゅろす。
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