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中編
9
 

 両手の指を絡めて繋ぐと、槙野は色気を纏った笑みを浮かべる。



「ほら、気持ちよくなれ」
「は、はぁ…っ、あ、んあ、ぅ…っ」
「そう、…っ、もっと、」
「んな、早く、あッ、うごけな…っ」



 腰を打つ度に繋ぎ目から、ぱちゅぱちゅと音が鳴る。
 見つめあったまま、そらすことなく動き続けるが槙野のように早くは出来ない。
 生理的に溢れてくる涙でぼやける視界のなか、槙野が小さく笑った。



「手伝うから、大丈夫だって…っ」
「ふあ、あ、んん…っ、や、」



 腰を捕まれ、下から強く打ち付けられ、喉がつりそうになった。
 衝撃が強すぎて飛びそうになる。
 けれど、次から次へと突き上げられては飛ぶのを許さないと言わんばかりに衝撃が与えられる。



「あっ、あらた、ぁっ、ん、はあ…っ」
「…っ、絶景、だな」
「ふざけ…んぁっ、あっ、アッ」
「は、…ん、っ」



 槙野は俺の腕を引っ張りながら体を起こすと、ぺニスを一度抜き四つん這いにされ、再び中に埋め込まれていく。
 枕にしがみつく。
 背中に息を感じ、キスをされ、深くまで貫かれては肌がぶつかる音を聞く。



「はっ、きれいな背中してんな…っ」
「へんた、いっ、あぁっ、ちょ、まっ、て」
「…減らず口」
「あッ、あーっ、やら、んっ」
「かわい、っは」
「ば、か、ぁう…!」
「ん…泡立ってる」
「やっあ、ひゅ、んん…っ」



 ぐじゅぐじゅとかき回され、奥までえぐり込む。永遠に続くようなそれに、何度達したか分からないくらいもうずっと達しているんじゃないかというほど、ひたすら叫ぶしかない状態が、溶けそうな感覚が、飲み込まれそうになる。




 自分が何を言っているのかすら理解が追い付かないのに、槙野は楽しそうに笑っていた。

 なにが楽しいのかは分からない。
 けれど俺自身、濁流のように続く快感の貪欲さが辛いはずなのに、それに飲み込まれているのか、既にぶっ飛んでいるのか、感じ取るものは苦痛ではなかった。
 ニュアンスが違うだけで、早く終われとは思う。
 互いに体が壊れてしまうのではと、そんな錯覚すらも飛んでしまった。
 ただこの欲を飛ばすためのそれではないような、そんな錯覚になっている。

 槙野の目の奥が暖かいからだ。欲望に忠実に見えるのに、微かな気遣いを感じる。
 何故だろう。
 なんでこんな、こんな。



「…はぁ…っ、余裕が出てきたか?」
「あ、ぅ、…はっ、まひ、しそ…」
「俺も」



 頭が真っ白になっていた時よりは、幾分思考が回るようになってきている。
 飛んでしまった方が楽なのに飛ばない。
 いつでもそうなれるような気はするのに、自分がそれを拒んでいるような。


 けれど必ず、終わりはやってくる。



 射精に伴った強さと早さに揺さぶられ、口から出るのは叫びと飲み込めない唾液ばかり。
 死ぬかもしれない、なんて思ってしまって、それを口走った気がした瞬間、ぶつり、と意識の糸が切れた。




 

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