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短編集(~2019)
02
 


「…とうま、くん」
「……ぁ?」


 長時間の行為の後、案の定動けなくなったイチを抱き上げて浴室に行ってシャワーを浴びて、窓とカーテンを全開に、行為による独特な臭いを追い出す。

 ベッドに寄り掛かる俺の横には、脱力したイチ。
 乾かしたイチの髪を指で梳いていたら、力無い声が吐息と共に耳にかかる。


「なんで、こういう事するんですか」
「………」


 今更、と言えば今更だ。
 疎遠になる前から、それなりな行為に及んでた。
 だけど多分、気持ちの問題か。


「…言わねぇとわかんねぇのか?」


 素直になる気なんざ更々ない、と鼻で笑えば、イチが顔を上げて俺と目を合わせる。その目はどこか怒ってるみたいで。


「予想は出来ますけど確信にするには本人の言葉が必要なんですよ。…むしろ言わないと分からないのは君の方です」
「ぁん?」


 前半正論だったのに後半馬鹿にしやがった。


「───例え、今君が僕の側にいなくても、」


 意味ありげに途切れた声に眉を寄せれば、イチは体ごと弱々しくも向きを変えて向かい合う形になって。
 両手が自分の頬を挟んだと理解した時には、イチの顔は間近にあった。


 

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