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短編集(~2019)
ペースト状にまでも。
 


 ───いつまでもいつまでも、くそったれな位に消えないこの曇りはなんなんだ。
 そう思って柄にもなく悩んで見つけ出した答えは、距離が開いてから気付く愛しいというくすぐったい気持ちと、あいつの近くにいる唯一への嫉妬だった。











「───…ッは、…っ」
「…ッ、」


 窓もカーテンも閉めきった薄暗い部屋で、篭った空気も構わず吸い込んで吐き出して。
 ベッドのスプリングが軋む音と、普段見せないポーカーフェイスが崩れた愛しい存在の荒れた呼吸と言葉になってない声が脳を支配する。
 汗と白濁色の液体でベトベトになって。
 もう何時間も繰り返してるだろう行為に溺れる。


「───…、」


 自分を塗り込ませる度に聞こえて来る声が、痺れを悪化させる。
 鼓動がデカく聞こえる。
 赤らむ顔と、虚で潤んだ透き通るような目と汗で張り付く同色の髪が、まだ自分自身の欲を衰えさせない。

 今はそれが丁度良い。
 顔に張り付く髪を拭うように払えば、薄ら目をしたその全てから色気を感じる。


「な、に…?」
「イチ、」
「……なん、」


 息を切らして、言葉もまともに繋がらない声が。


「……、お前は、俺のもんだ」


 疎遠になった愛しい存在が、高校生になった今、目の前にいるのに。
 違う学校だったから、調べて会いに行ったら、そこで知らない奴に俺が好きだった笑顔を見せるイチを見つけた。


 この声も、色気も、甘い雰囲気も、赤らむ顔も目も姿も全て、俺だけが見ていればいい。

 止めていた体を再び動かせば、熱をもって気怠げな表情が変化する。
 余裕なんてなくなればいい。俺しか見えなくなればいい。


「…お前は、イチは、…今までもこれからも、俺のもんだ」
「───…」


 だからお前に、別の唯一の存在なんざ必要ねぇ。

 繋いだ手に力を込める。
 弱々しくも返される圧力に、愛しい気持ちが増して、声が溢れる口をふさいだ。


「……んむ…ッ……はッ、」


 甘い。蕩けちまう。
 舌を絡ませながらも、少し口が離れる度に漏れだす甘過ぎる声にぞくりと粟立つ。

 愛し合う行為。ただ、愛なんて俺だけなのかもしんねぇけど。


 


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