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短編集(~2019)
03
 

「今日給食カレーかあ、学校のカレーって甘くねぇ?」
「さあ、僕は好きだけど」
「俺も好き」


 …なにを言いたいんだコイツ。

 甘い、というのだからあまり好きじゃないのかと思えば、学校のカレーは嫌いではなくむしろ好きだと笑っている。


「甘いんじゃないの」
「甘いよ?」
「それって辛い方が好きなんじゃないの」
「好きだよ」


 一体こいつは何が言いたいんだ、と思ったとき、ふと思い当たりそうな所を見つけ、眉間にシワを寄せてしまった。

 ……こいつ。


「……、カレーのことだよね?」
「ん?」


 にっこり。
 なんだその甘い雰囲気は。
 頬杖をつきながら、女子に人気のある友人が女子に人気の笑顔。いや、作り笑いじゃなくて、この笑みは。


「違うの?」
「いんや?」


 曖昧な返答しやがった。
 明らかに中学生らしくないのは、この友人の方だ。
 そんな、何度目かの確信を得たとき、視界に女子の制服が入ってきて友人から視界を外した。


「結城くん、」
「……ん?」


 女子に呼ばれた友人は、さっきとはニュアンスの異なった返事をした。それを分かっているのは、言った本人と僕くらいだろう。


「ちょっと、話があるんだけど…」


 小声ということ、教室では言えないこと、数人の女子の塊がはしっこにいてこちらを見ていること。誰から見ても告白の類いであることは明白だった。
 とりあえず思ったのは、給食前という妙なタイミングでなぜ動いたのか。一般的に告白とかは放課後とかではないのか。
 あの女子集団に急かされた可能性もなくもない。
 後先考えないあたり、中学生という時期なのか。なんとなく思ったことが、授業中に考えに耽っていた内容とリンクする。


「給食のあとじゃ駄目か?」
「…っごめん、すぐ終わるから」
「……、わかった」


 一瞬、友人と目があった。特に意識していなかったから反応しなかったけど、小さく、本当に小さく溜め息を聞き取った気がした。


 


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