短編集(~2019)
03
昼飯を食いにいく、と言っても行くのは日向宅。イコール飯は誉の手料理なのだ。そしてそれがマジで美味い。
家事出来て飯は美味くてイケメンで病院の院長とか、なにこいつ完璧じゃん。
「今日はイタリアンでございますか」
「たまにはパスタも良いだろう」
「基本和食派だもんね」
綺麗なカウンターキッチンの向かいでフライパンを振るうイケメンを見る。腰エプロンじゃない普通のエプロンしている辺り、見た目とのギャップすげぇ。
似合っているところがまたすげぇ。
「りく、冷蔵庫からサラダ出しておいてくれ」
「おう」
キッチンに回り込み、これまたでかい冷蔵庫の二段目を開けると作りおきされているサラダがいた。サラダが盛られているボウルを取り出して、キッチンの(広いからいくらでもある)空きスペースで適当に一人前ずつ皿に盛っていく。
横では旨そうなパスタが出来上がっていく。いい匂いだ。
出来る男は素晴らしいね。
「───で、なしてこうなる?」
「お前相変わらず筋肉付かないな」
「黙らっしゃい!」
食後、リビングのソファーで寛いでいたらいつの間にやら後ろから腕を回され腹の辺りを触られている現状。
ふにふにすんな。
「お前仕事はよ?」
「終わった」
「平然と嘘つくな」
「本当だ」
「昼に終わるのか」
「終わる」
「院長なのにか」
「院長だからだ」
「職権乱用!」
「職員に優秀な人材が居るからだ」
「いいのかそれで!?」
「今に始まったことじゃない」
「………」
うむむ。言い切られるとなにも言えん。
「とりあえず腹さわるのやめません?」
「やめません」
甘えたか。どうした。
「…お前、切るのは百歩譲って許すがODは止めろよ」
「なんだ急に」
「………」
黙られても。
医者の立場からしたら、薬物の大量服用による副作用の断定が出来ない上に、その副作用で死亡する可能性もあるからか。
誉は医者だ。傷や病を癒し治し、助ける仕事をしている。
なのにオレは、切るわ飲むわ。複雑なんだろうか。オレには分からない。
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