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短編集(~2019)
12
 

 どこから聞こえたのか分からないが、とりあえず小走りに進んでみた。
 目の前に、誰かいる。
 ふたり、並んで立っている。


「……だれ?」
「やあ、アリス!」
「待っていたよ!」


 まるで自分の言うべき言葉が決まっているかのような、テンポの良い声で。
 瓜二つの姿をした、二人。
 ぱっと見わかんない。

 ただ、襟の刺繍が違うくらい。


「あのさ、白兎見なかった?」
「それよりアリス」
「それよりアリス」
「いや答えろよ」
「セイウチとカキの話を聞いてよ!」
「セイウチとカキの話を聞いてよ!」

「いや、ごめん、無理」


 言う気がないなら、用はない。
 というわけで勝手に何かを話し出した二人をフルシカトして走り出した。






 気付けば森を抜け出した、またしても草原に出てきて。


「───あ!」


 目の前、少し遠いが、全身真っ白の八頭身の白兎が走っているのを見つけた。
 相変わらず綺麗過ぎるフォームだ。

 スカートを手繰りよせ、草原を走り出した。
 急がなきゃ、という声が微かに聞こえた気がして。
 あいつ疲れないわけ?
 どんだけ体力あんだよ畜生!
 すでに走りまくって体力が限界の俺を嘲笑うかのように、フォームを崩さないスピードも緩んでない白兎が、かなりムカつく。


「っ待てコラァ!」


 勢いをつけるように声を張り上げて、白兎を追い掛ける。

 だがしかし、追いつけない。
 距離が縮まらない。遠くもならないし縮まらない。なんで。

 瞬間、ぐらりと視界が揺れた。







 ───…ス、


 声が、する。
 暗い。重い。揺れてる気がする。


「……ん、」
「アリス!」


 目が覚めた、というのはおかしいだろうか。
 いや、でも、目が覚めた感覚がした。
 目の前には、心配そうな顔をした母様がいて。


「……れ?」
「夢を見たんだね、アリス」
「…ゆ、め?」


 ぼんやりとした頭でついていけない。
 見渡せば、草原。背には大木。
 どこからが夢だったのか、定かじゃないけれど。

 ───戻さないってか。

 心中で突っ込みながら、深くため息を吐いた。
 どうやら先は長いらしい。


END
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本当はアリスになった一ヶ月前から夢にしようかと思ったけど、なんとなく変な夢オチに。
すみませんすみませんすみません。


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あきゅろす。
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