短編集(~2019) 06 白兎を追い掛けていくうちに、気付けば周りには木々が生い茂り、まるで森の中。 目の前に走っている白兎は洞窟のような穴の中に入って行った。 「……ッ、ハァ、」 上がる息を無意識に調えながらも、同じように穴に入る。 入った、はずだった。 「───…っ!」 ぶわっと広がるスカート、地に付かない足。 そう、穴の向こうは下にまた穴があったのだ。ということは、俺は。 「おち…ッ!」 てる…! 舞い上がるスカートを押さえながらも、何故か猛スピードではなく緩やかに落ちている。 周りを見遣れば、不思議な絵が流れるように壁みたく飾られている。 「……!」 目の先に、白兎を見つけた。 そこで初めて気づいたのが、着ている服の色だった。 初めて見た時は赤だったのに、今は黒い。確かさっきは青だった。 この短時間で着替えたってか。 どんだけすげぇの、お前。 「待って!白兎!」 落ちながらも小走りの白兎は、俺の声なんか聞こえてないのかフルシカトだ。 「……ムカつく」 言いながら地が見えて来たのを確認して、少しでも近付こうと体を前のめりにしてみたり色々やってみる。 白兎は地に着くとすぐに走り出して、ドアの向こう側に消えた。 俺の知る限りは、確かドアの向こう側には行けないから何か食うはずだ。 そう思ってドアに近付いたら、違和感を覚えた。 「……ぇ、普通…?」 ドアのサイズが、出入り可能な高さだったのだ。 省いたのか?この流れは省いたのか? まぁいいや。 手間が省けたとドアを開ける。 その瞬間、視界が暗闇に包まれた。 「……ぁ?」 光の筋も見えない、闇。 自分の足元すら分からない。 「…省いたのか」 ビンに入る必要もねぇってか。 ふと、今までと違うにおいを感じた。 周りは見えない。なんのにおいだ? 暗闇で足元は分からないが、とりあえず歩いてみる事にした。 - [←][→] [戻る] |