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短編集(~2019)
02
 

 俺は男である。
 自分の世界では、男。
 高校生になったばかりの、完全なる完璧な男子高校生なのだ。

 けど一ヶ月前、突然、本当に突然この世界に吹っ飛んでた。
 吹っ飛んだかどうかは分からないけど、まあそういうことにして。

 気付けば、この大木の下にいて。
 今のところの母様にアリスと呼ばれ、訳も分からないうちに俺は男なのに『アリス』になっていたのだ。



「ねぇ、アリス、おやつにクッキー焼いたの。今日は上手く出来たんだから!」
「母様のお菓子はいつも美味しいよ」
「ホント?うれしい!」


 形はアレだけど味は美味しいよ。
 上手くってのは多分、形の事なんだろうけど。
 憎めない性格の、のんびり屋な母様は結構な癒し系だ。


 ま、そんなこんなで一ヶ月、俺はアリスに慣れてきた頃に。

 今日の夢。
 そう、八頭身の兎が時間に追われて、人の話も聞かずに走り去っていく夢を見た。

 まさかとは思うけど。


 母様と手を繋ぎながら、でかいお屋敷まで歩きつつも消えかけている夢の内容を思い出しながら考えた。



 このフリフリ服にも慣れたなぁ…。
 てか、ここに来た時にはすでにこの格好だった。
 まさか精神だけ…?とか思って色々と確認したら、体もだった。
 うん、まあ、色々だよ。
 決定的なもん見つけたから良いんだよ、確信したの。


 元の世界の俺は、行方不明なのだろうか。


 この一ヶ月、考えるのを忘れてたわけじゃない。
 どうすれば戻れるのか。
 母様は好きだけど、やっぱずっとここにはいらんないし。


「───ほら、見て!上手く焼けたでしょう?」


 ふ、と我に帰れば、目の前には、高価な大皿に並べられた数種類のクッキー。
 確かに綺麗に丸くなってる。
 来たばっかの時はガタガタだったのに。
 一ヶ月でここまでってすげぇな。


「美味しそう!いただきます」
「うん!」


 にこにこ顔の母様は綺麗。というか可愛らしいと思う。


 ───まぁ、この世界で一番残念なのは、母様も含めて全員男ってことだよ。
 乙女的言葉遣いの母様も男なのだ。
 つかどうやって産んだの、この世界では産めんの、とか考えたよね。
 どうやって生産してんのかな。
 異世界の不思議ってカンジだ。




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あきゅろす。
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