短編集(~2019)
03
「………」
「………」
横たわった俺を見ている。呆然と似た目。
燃えるような赤。
見覚えのある色。
けど、
「………だれ」
聞いといて多分、間違いはないはず。
「……で、あの不良達にかつあげされそうになったのを抵抗したらこうなった、と」
「ええ、まあ、そんな感じかな」
日課である夜の散歩をしていたら、絡まれてかつあげされそうになって抵抗したが、捕まって押さえ付けられて今に至る事を説明した。
その不良共を彼がのしたから、結果的に取られた財布は返ってきた。
赤毛の彼は、なんと僕の同級生らしい。
見覚えがあったのは間違いじゃなかった。
「……俺、今日の占い普通だったんだけどなあ」
「僕は一位でしたよ」
「………」
なんで落ち込んでるのか解らないけど。
「とりあえず、財布は戻ったし。僕に手当とご飯を要求されますよ」
にこりと笑って言えば、同時に腹の虫が催促を思わせるようにタイミング良く鳴って。
目の前で揺れる赤い髪。
おんぶされるなんて、いつぶりだろう。
ゆらゆら揺れる脚。前に回った腕。
体はまだ痛いけど、なぜか心は温かい。
占いが普通だったなら、きっと彼は天秤座。
「ち、しゃーねぇな」
「今日のラッキーカラー、僕の髪の毛の色なんですよね、」
「………るせ」
やっぱり。
この気味の悪い色素の薄い色がラッキーカラーだなんて、損な人だ。
「因みに僕のラッキーメニューは、寿司です」
「……、ぜってぇ嘘だろ、それ」
本当なのに。
深夜の公園でおんぶされて、ゆっくりと歩き出した彼は、笑っているような気がした。
なんだか、すごく温かい気持ちになったんだ。
明日は切らずに済みそうだ。
「お前ん家、どこ」
「すぐそこですよ」
そう言ってナビしながら着いた場所に、唖然として固まった彼を突いたのはまた後の話です。
END
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彼に拾われた僕の家は、一人で住むにはデカ過ぎる一軒家。
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