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短編集(~2019)
02
 

 夜。
 散歩に出るのはいつも23時。
 決まった時間に、決まってない道を通り帰るのが日課。
 淋しさを紛らわす為なのか、ただ歩きたいだけなのか、わからないけれど。
 たまに通る公園の中に入った時、それは起きた。


「───なぁお兄さん、金貸してくんねぇ?」


 肩を叩かれて、一言。
 なんとも、古い。いつの時代の不良だろう。返す気なんて微塵もないくせに。


「なぁ、聞いてんの?」
「ビビってんじゃねぇ?」


 若干俯いてる僕は、相手の下半身しか見えない。
 何人いるんだろう。僕は喧嘩が出来ない。運動神経も並だし、殴り合いが出来るほど力もない。


「持ってきてないです。」

「あ?」
「パチこくなよ」


 嘲笑い。見下し。
 くだらないと思っている僕が、1番彼等を見下している。

 歩きだそうと脚を動かしたら、腕を引っ張られた。


「───やめ、っ!」


 腹に、衝撃。
 切り付ける痛みとは違う痛み。
 鈍い、ずしりとくる、痛み。


「嘘ついてんじゃねぇよ」


 相手の手に見覚えのある塊。
 財布。中身はあんまり入ってない。数千円くらいだろう、カードとかは入れてない。本当にお金しか入れてない、黒い長財布。


「……ふ…っ」


 瞬間、視界が揺れた。
 顔を殴られたんだろうな。


 ぼんやり考えてる僕は、きっと色々と不感症なんだろう。
 ぐらりと、ぼやける視界。最後に聞こえた声は、笑い声。












 ───…い。


 暗闇の夢。夢といえない空間。暗闇から、声が聞こえる。

 ───。


「……っ、ん、」


 意識が浮上する。
 けど、目が開かない。
 ふわふわと、中間辺りにいるような。

 ───でも、意識が、落ち、

 る瞬間に、鋭い痛みに襲われた。


「…ぅあっ、い、いたい!」


 瞬時に痛みの元凶を断ち切ろうと手を伸ばしたら、何かを掴んだ。
 頬が痛い。頬の痛みと同じくらいの力でそれを握りしめる。

 すると、ぱっと痛みが引いて。
 目を開けば、ぼんやりと影。
 慣れた目で見たその色に、目を見開いた。


 


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