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短編集(~2019)
04
 


「…雨倉、こっち見て」
「……」


 あぁ、たまらない。

 意識してないんだろうけど、上目遣いはちとキツい。
 可愛い可愛い可愛い。

 どうする。言葉が詰まった。
 見つめ合う事が嬉しくて。


 箸を止めた事に安心した反面、なんか申し訳ない気持ちになった。

 雨倉は気付いてる。

 いつもは食べながらだったりするのに、コンビニ袋を机に置いたまま手を出してない俺に。


「……俺はお前と付き合ってる気でいたけど、雨倉は?雨倉もそう思ってくれてた?」
「……」


 揺らいだ目には嘘がない。
 雨倉は嘘が嫌いだって知ってる。
 小さく、ホント微かに頷いたのを見た。
 にやけそうになるのを堪えて、息を吸う。


「良かった。それでさ、俺、雨倉に言いたい事があるんだ」
「……、」


 そんな、悲しさとか寂しさとか堪えた目しないでよ。

 なあ、無口なお前がどんな目をしたらどんな感情だか分かるようになった俺は、とんでもなくお前を愛してると思うんだ。


「俺と、付き合って」
「───…ぇ、」


 小さく漏れた声に、堪えられなくて口が緩んだ。
 目が物語ってる。驚愕って言葉。


「俺は、雨倉に触れたい」
「……ッ」
「ここ何日間、俺がここに来るのどんだけ我慢したか。……お前だけ、触れたい」


 だからお前は俺だけに触れて。
 俺だけ見て。俺だけ考えて。手放すなんて、無理。


 言いきった後の雨倉は、今にも泣きそうだったから。

 ゆっくり、まだ中身がある弁当箱を片付けて、鞄もふたつ持って、コンビニ袋も持って。


 お前の涙を他人に見せるつもりはない。


 だから、触れたくて触れたくて仕方なかった雨倉の手を握って教室から出た。
 教室が静かになってたなんて、気にならなかった。


 屋上が、俺は1番好き。
 向き合って座ってるけど雨倉は顔を伏せてる。


「雨倉、こっち見て」


 教室と同じセリフなのに、俺の声が、いつもより、始めて出すくらい甘い。


「……雨倉、俺の恋人になって。雨倉だけの俺にして」


 だから俺だけの雨倉になって。

 零れた涙に堪えられなくて、俺は雨倉に沢山沢山触れました。
 壊したくなる程に、愛してる。
 だから、お前も、


END
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後から俺がしてた事が浮気になるって知ったから全力で謝った。

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