短編集(~2019)
03
───その姿を見る度に、手が出せない普段の自分からは想像出来ないヘタレな一面を気付かされた俺は。
最近、俺が散々抱いてきた生徒たちが親衛隊とやらであることを知ったのは、ぱったりと所構わず抱き散らすのを止めてからだった。
親衛隊ってやつが居る事にびっくりしたけど。
携帯番号の登録は始めからしてなくて、全部口頭だったから一から削除なんて面倒な事はない代わりに、噂話っていうこれまた面倒な事に頼るしかなかった。
集団人数が多い一人の生徒をシメに、伝えといて、なんて言って。
けど、予想通りに広めてくれたからひとつ気になった事がある。
自分のクラスでも話が出るもんだから必然的にアイツの耳にも入るんじゃないか、って。
だから、様子見するように、みせしめにするみたいに名前も曖昧な抱いた生徒との会話をするのも止めた。
もしかしたら勘違いされるかも、なんて不安になったけど雨倉に手を出してない、抱いてないから、同じだと思わないっていう事に一人で勝手に賭けた。
俺のやることは決まってる。
あのシメの日に決めた。
見てるだけじゃ、アイツは特に変化はない。
無表情、興味なさそうな目けれど、たまらなく愛おしい。
早く、触れたい。
噂話が広がり出して三日目。
俺は、行きたくて行きたくて仕方なかったアイツの目の前の席に、昼休み、いつもしてきたのと変わらずに、行った。
コンビニ袋をふらふらさせて。
「───…あーめーくーら、」
「……」
見逃さなかった。
目敏くなったわけじゃないけど、雨倉に関しては違う。
ひとつとして取りこぼしたくないナニかがあったから、一瞬の変化も見逃さなかった。
感情のない目が、微かに揺れて感情を持ったことを。
「やっぱ弁当うまそう」
「……」
俺はいつも通り。
雨倉が返事を返さないことだけが違う。
「自分で作ってんだもんなあ」
「……」
「……」
自信を無くしてきたのは確かだけど、手放したくないのも確かだから、揺れた目に賭けたんだ。
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すれ違い歯車を噛み合わせるために。
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