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短編集(~2019)
02
 


「───そ、相馬くん、」
「なあに?ハルちゃん」


 雨倉が俺を拒絶し始めて、教室でも相手にしてくれず寂しくて屋上に逃げ込んだら、いつだかに抱いたハルちゃんがいた。

 小柄で女の子みたいなハルちゃんは俺に好意を抱いてるらしい。


「あのね、あの人、相馬くんを騙してるんだよ、」
「あの人?」


 挙動不審にきょろきょろきょときょと視線を泳がして、ハルちゃんは低くもない声で言ってきた。
 主語がないんだけど、試してんの?


 ………なにを?


「あのいつも相馬くんに付き纏ってる無表情な子だよ……!」
「………雨倉のこと?」


 付き纏ってる?雨倉が?俺に?

 そんなことあったら嬉しくてたまらなくなって場所考えないでキスするわ、俺。


 こくこくと何度も首を縦に振ってるハルちゃんを見てたら、なんか思い出しかけたけど、まあ、いっか。


 それより、


「なんで?」
「───…え、」


 いつもと変わらない笑顔で聞いたら、びっくりされた。
 だってさ、気になるじゃん。



「なんでそう思った?なんでそれを俺に言った?」
「……え、と、あの、…雨倉って子が認めたから、それで、」
「なにを認めたの?」
「騙してるって、こと。そう、騙されてるんだよ相馬くん…!」
「騙されてる?俺が?」
「そうだよ!」
「どういう風に?」
「…え、」
「どういう風に騙してるの?知ってるんでしょ?教えてくれないかな」
「あ…ッ」


 俯いちゃった。
 だんまりは好きじゃない。だってアイツも、俺にだんまりなんだ。


 騙す、騙されてるって言うけど何をどこを騙してるんだろ。

 答えを用意しなきゃ、疑いが生まれるのを知らないわけじゃないと思うけど。
 ここまで聞くと思わなかったのかなー。


 どんな形であっても、俺とアイツが過ごしたあの期間が嘘なら、アイツは、雨倉はもっと感情豊かってこと?
 だって好きとか言われた事ないし。
 どっちかっつーと俺が付き纏ってんじゃね?


 だって昨日、知らない奴らに言われたんだ。

 ───雨倉に付き纏ってんじゃねぇ、って。



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止める気は更々ないけど。

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