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短編集(~2019)
お前を愛しいと思う瞬間に全ての声を消す
 

 ───愛してる。
 全てを俺で埋め尽くしたくなるほどに。
 縛り付けて、その目に俺だけを映して、その脳みそに俺だけを刻み付けたくなるほどに。











 いつも話し掛ければ相槌を打ってくれる、基本無表情な恋人は、いつの間にか気付いたら相槌は疎か電話もメールも返事をしなくなってた。




 俺の事が好きだと言ってくる、チワワみたいな男に一言甘く声をかければあいつらは何の抵抗もなく頷いてついて来る。

 だから、暇潰しに抱いた。

 抱いても抱いても俺の頭の中にはアイツがいて、声を塞いで目を閉じて姿も消してアイツを思い浮かべながら抱いた。
 感じる快感も、感触も違う虚しさを無理矢理追い出して。


 アイツはいつも感情を出さない。
 いつも無表情で、淡泊だ。

 だけど二人で居るときに、たまに、ホント稀に見る感情がたまらない。




 アイツを見つけたのは誰よりも俺が先。
 入学式で見た、滑らかで凜として何にも侵されてない姿から目を離せなくて。

 無表情な顔は、よく見れば白く綺麗な肌と長めで下を向く睫毛。


 真っ直ぐな視線の先に俺が映ればいいと思って、入学式から三日後に声をかけた。

 予想してた通りの反応を返されたけど、あの目に映っているのが俺だけだと思ったらたまらなく愛しく感じた。


 だから、ずっと一緒にいた。
 俺が一方的に話し掛けたり離れなかったりしてるだけだったけど返される短い言葉も声も真っ直ぐ見つめてくる目も、その時は俺だけなんだって思ったら、いつも、常に、脳みその奥から全てを俺で埋めたくて。


 暇潰しに生徒を抱いていく行為が、いつの間にかアイツを抱いていく妄想に変わったのはいつからだっただろう。







 なあ、お前は気付いてる?
 移動中の廊下や休み時間に一部の生徒がお前に向ける、熱い視線に。


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それを俺は鬱陶しく思ってる事とか。

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あきゅろす。
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