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短編集(~2019)
02
 


 『辛い』と思う事はない。
 『苦しい』と思う事はありすぎた。



 苦悩を他人と比べる人がいる。

 身近に、クラスメートに、自分達の苦悩を自慢げに言い合う奴を見た。それはなにを求めた言葉なんだろう、なんて、昼飯を食べながら考えてた僕は大概深追いタイプだろう。


 比べるなら、自分自身の過去と比べればいいのに、わざわざ他人と比べるなんて失礼だろ。

 自分にとっての苦悩が、他人にとってちっぽけな苦悩になったりする。逆も然り。
 可哀相だと、思ってほしいんだろうか。

 同情?共感?

 価値観は違うもの。
 否定的であり共感出来ない他人と。
 否定的であるが共感しようとする他人と。
 価値観がどういうモノかなんて、他人に解るわけない。

 自分自身の価値観を他人に共感してもらおうなんて。またその他人の価値観を自分自身で共感しようとするのか。出来ないくせに。
 結局理解する基準は自分自身の価値観のくせに、それには気付かない。


 常識。
 一般の社会人として誰もが共通してもっている知識や分別。

 当たり前のように、昔から根付く決まりを破ってまで生きればただの自分勝手。ある程度の、他人を巻き込まない自分勝手で、常識を持つ人間では、他人はそれを自己中と認識しない。
 全ての人間が、自分勝手だからだ。


 根付く常識から外れてしまえば異常。
 さらにそこから外れてしまえばキチガイ。

 偏見とは、なにか。軽蔑?差別?

 汚いものを見るかのような、目。
 偏見。偏ったものの見方。

 偏るのはどこに?常識という軸から偏る。それは自分の価値観に偏るということか。負けず嫌いだから、かな。

 否定出来ないと思う。

 開き直りとか妥協とか、あきらめとか。そもそも負けたくないっていう気持ちがあるけどでも、っていうところか。

 だから、同情とか、可哀相だとか、そういう慈悲的な感情を抱かずに、その程度かと、そんなもんかと否定的になれば、こいつは異常だ、人間じゃない、という認識を持たれる。


 矛盾、することには、気付かない。


「───雨倉?」
「………」
「おーい。俺の顔になんか付いてる?」


 そして、机を挟んだ目の前で飯を食うコイツも、気付かない。


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お前と一緒にいる時に僕に向けられる一部の人間鋭い視線。

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あきゅろす。
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