短編集(~2019)
04
ロッカーを閉めて振り返れば、春日が床にへたりこんでた。
「なにしてんの」
「こ、ここ腰が、抜け、抜けちゃいました」
「………」
なんでそうなる。
置いて行ってやろうかと思ったが、今の見た目である春日がこんな場所で動けないって分かれば、喰って下さいと言ってるようなもんだろう。
ふ、と溜息をはいて。
俺は春日の前にしゃがみ込んだ。
「わ、わわわッ、せ、せせ先輩!?」
「……うるさい」
春日を抱き上げる。
ふわりと軽く、びっくりした。
俺の一言に、今度は両手で口をふさぐ春日を見て部室のドアを足で開けて閉める。
仕種は可愛いんだがな。
……また何考えてんだ、落ち着け俺。
お姫様抱っこのまま歩き続ける。
下駄箱まで行くのに誰とも遭遇しなかったのが奇跡だと思う。
「あ、ああの、先輩ッ」
「どうした」
「ももももう大丈夫ですッ」
「ああ、」
下駄箱の前で、吃りまくりの春日を下ろす。
確かに大丈夫のようだ。ちゃんと立ってる。
「ああ、あありがと、うござい、ました」
「……どういたしまして」
春日は吃るのが癖なのか?
その後、素晴らしい早さで靴を履きかえた春日は、頭を下げてから目を合わせる事なく走り去った。
その時春日が意外と足が速い事を知った。
それから数日、春日の姿は見えず。
少し寂しく感じた、なんて、絶対に気のせいだと思いたい。
END
-------------------------
でも気になっちゃってさらに数日後に後輩くんを探しちゃったりなんかして。
[←][→]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!