短編集(~2019)
03
「…付き纏う、なんて、そんな、」
撮影する手を止めて、春日は眉を下げる。
言い方が悪かったか。
元々あまり人を責めるのは好きじゃない。
が、しかし。
俺は春日こまちという人間を、見た目とのギャップが凄すぎて嘗めていた。
「っ、そんなのッ、当たり前じゃないですかぁぁぁッ!!…やっばい色気たっぷりな先輩を一分たりとも見逃すなんて勿体ない!
だから先輩、早く生着替えして下さいいいいい」
なんでそうなる。
落ち着け。
落ち着け俺。
再び撮影を開始する春日。
ああもう面倒くせえ。部員に見られるのも面倒くせえ。
「いいか春日、俺はこれから着替えるが、絶対に声を出すな。少しもだ。カメラも禁止」
「か、かかカメラは許して下さいぃぃ」
「じゃあ帰れ」
「………わかりました、撮らないです。目に映して脳にばっちり記録します」
そこを諦めんのかよ。
てか怖ぇよ。
大人しくカメラをポケットに入れる春日を一瞥して、ロッカーを開けて袴を脱ぐ。
「ッ!!!」
後ろから何か圧力が。
言うことを律儀に守るあたり、春日はそこら辺の変態とは違う。
今までも付き纏ってるだけで、写真を売ったりとか直接的な被害があったわけじゃない。本当に自己満足でやってんだと思った。
軽く、ぱたぱた、ばんばん音がする。
振り向いたら悶えてた。顔を真っ赤にして口元押さえながら、ベンチ叩いたり床叩いたりしてた。
まあ、音は禁止してないから良いか。
見た目は可愛いんだが、どうもな。って、俺は何を考えてんだ。
落ち着け。
落ち着け落ち着け。
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