短編集(~2019) 07 コースターが終わり、慶秀さんの興奮は最高潮にある。 「たまげた!馬にて早う、風をば斬り度る乗り物、破顔な、ら叫ぶ衆、面をば伏せておりき者、こがふらつく脚! あれは、いかがやりて度りているのでござる?頭をば下にして落ちぬなぞ! おお、あれは、なんじゃ!馬じゃ!馬、沢山いるそ立夏殿! 面も御身も固まりているではござらぬか! あが箱は、なんじゃ?奇怪な形をば致し候ぞ、なにゆえあが中に入りて度る?此処は、度るもが、多いなっ」 なにから説明するべきか。 かなり笑顔だ。 どうやら気に入ったらしい。 結局説明しながら振り回され、昼飯にも興奮して、慶秀さんは終始興奮。 血圧大丈夫か? てか宗夜の体が大丈夫か? 昼飯の後も、ぐるぐる広い遊園地内を引っ張り回され、慶秀さんは元気なのに俺はぐったりだ。 興奮ってすげぇ。 夕方、帰りの電車の中、慶秀さんはうたた寝していた。 空いてたから座って少ししてからだ。 あれだけ興奮すりゃ疲れないわけがない。 俺の肩に頭を乗せて目を閉じて静かになった慶秀さん。 見た目は宗夜だから、なんだか複雑だ。 ぴくりと身動きした体。 見れば、うっすらと目を開けていた。 「……ん…?……ここどこ」 耳に届いた声が、違った。 「……おはよう、宗夜」 「あれ?…え?なんで立夏がいる?」 眠ったと同時に慶秀さんも眠ったらしい。 混乱する宗夜。 揺れる電車。 とりあえず、遊園地に行って疲れて眠ったんだと伝えた。 記憶なんてあるわけないけど。 多分きっと、もやもやしてんだろうな。 でも、何度もあることだから宗夜は諦めてる。 家まで送り、宗夜の家の玄関の前。 「なんかよくわかんないけど、ありがとう立夏」 「いーえ、楽しかったから。また行こうな」 「うん」 今度は宗夜のままで。 なんて言えない。 いつもの笑顔で立つ宗夜がいて。 ふわふわな雰囲気が堪らなくて、抱き寄せてキスをした。 零れる声は宗夜の声。 あのお礼は、慶秀さんからのお礼として受け取っておこう。 END ------------------------- 難しいよ、昔の言葉って。 [←][→] [戻る] |