短編集(~2019)
11
「───……、は…?」
目が覚めたら、見たことのない天井が視界に広がって思わず呟いた。
久しぶりに声を出した気がした。
そして、自分の体が柔らかいベッドの上にあるのだと自覚した時に。
同時に眠る前の事を思い出す。
「……っ!?」
がばっと起き上がった衝撃で腹とか頭とか、体が傷んだ。
自分の体を見れば、制服じゃなくて大きめのロンTと下はスウェットを着ていて。
体も、自分の血の跡も汚れも無くなってて。
かたん、と部屋の外から音がして、俺は恐る恐るベッドから抜け出してドアのない部屋から少し顔を出した。
そこには、白いシャツとスラックスを着た後ろ姿が見えて。
窓の外は真っ暗で、ビルや車のライトやネオンの光がちらほらあってまだ夜だと悟る。
「……あの、」
小さく声をかけてみたら。
男、三門さんは振り向いて目を見開いて俺を見ていた。
そんな驚くのか。
「あ、ああ…起きたのか。眠っていたから、勝手に風呂と手当てを済ませた」
「……い、え。…ありがとう、ございます」
礼を言えば、微笑んでくれた。
そして三門さんは立ち上がって俺に近付き、頭を優しく撫でる。
その手つきが心地好くて、目を細めたら、三門さんはまた目を見開いた。
「……とりあえず座れよ、腹は空いてるか?」
「……べつに…」
「そうか。お茶は飲めよ」
そう言いながら俺の手を優しく掴んでソファーに向かい、座らせられる。
ふわりと身が沈み、キッチンへと向かう三門さんの後ろ姿を見つめた。
……仕事は、大丈夫なんだろうか。
事情を話さねばなるまい。
なんて言えば良いんだろう。
俺は窓の外に視線を移し、じっと見つめたまま考えた。
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