短編集(~2019) 05 ───うそつけ。 こだまする、繰り返される言葉。 嘘だってことは、分かってる。 けど俺は嘘を言う。 『嘘つき。全部嘘だったんでしょ?知ってるよ佳祐、だからオレも嘘をつく』 なんで出てくるんだ。 アイツのした事はきっと俺への仕返しで、それをただ黙って受けた俺は多分、その時笑っていたんだ。 「……っ、」 ずきり、と痛んだのは頭なのか、殴られた場所なのか分からない。 けど痛んだのは事実で。 怪訝な顔をしたその男は、何故か、俺の頬に手を添えた。 「泣くなよ」 「……は、」 泣くなよ。 泣いてなんかない。 泣いて、ない。 この流れ落ちる感覚は、知らない。 ぐいっとそいつの親指が目尻を拭う。 「……はあ」 男の溜息に、びくっと体が強張った。 なんで反応したのか分からなくて、目が挙動不審になる。 けど深い溜息はいつも、嫌いだ。 「…しゃーねぇな」 「…っ!?」 「あ?……なんだお前ちゃんとメシ食ってる?」 体が浮いた。 体が痛んだ。 軽々と俺の体を持ち上げたその俺は、ニヒルな笑みを浮かべている。 『お姫様抱っこ』と呼べるその抱え方なんてもうどうでもいいんだ、なんで持ち上げたんだ。 [←][→] [戻る] |