短編集(~2019) 02 ああ、そうだ。 二人きりで全裸のまま、朝も昼も夜も全て空っぽになるまでセックスしよう。 抱き合ってキスをして絡ませて、ぐちゃぐちゃべたべたになって、吐き出した全てがカピカピになって乾く頃には、においの篭った臭い部屋で二人で死んでいよう。 第一発見者に情けなんかないよ。 見つからない場所で、見つかった頃には骨だけになっていよう。 別に重ならなくていいよ、重いから。 ただ、肌を触れ合わせて温もりを感じるまま、冷めていく感覚を知りながら自分も冷たくなるのを知りながら。 幸せなんて、幸せだと思ってしまえばそれが幸せになるんだから、とんでもない話だ。 どっかで、いつか幸せになる為に苦労してる人間がいるのに、そんな簡単に終わらせる事が出来る言葉が、無慈悲なように思える。 愛してる。 愛してるから、嫌なんだ。 喜怒哀楽も、苦しくなる鳩尾も痺れる脳みそも溢れてくる涙も、込み上げる愛おしさも、全部、嫌いなんだ。 嫌いなんだよ。 あんたを愛してしまったから。 これが今だから。 目を反らす事の出来ない、するつもりもないただの現実なんだと。 だから俺は、嘘しか言えない。 「……だいっきらい」 「知ってる」 その余裕の笑顔も大嫌い。 頭を撫でる温かい手も、俺に向ける笑顔も、俺を包む体も、俺しか見ないその目も。 向き合う形で座っているこの近距離が、反らせない目が、腰に回る手と頭を撫でる手が、優し過ぎる視線が、柔らかい笑顔が、狂いそうなほど愛おしいと思っている俺自身も、大嫌いだ。 「相変わらず、嘘しか言えないのな」 「うるさいな、嘘なんて言ってない」 ----------------------- 嘘しか言えない高校生(受) 伊佐木 佳祐 恋人(受)を溺愛してる社会人(攻) 三門 悠 思考は高校生の方。 ふたりは同棲中。 [←][→] [戻る] |