短編集(~2019) 04 「んまー」 ほんのり甘くて酸味のある苺の味と、チョコレートのねっとりしたうま味を堪能して、次々と口に入れてく。 四つ目だか何個目だか分からないけど、最後のひとつを口に放った瞬間、ふわりと視界が歪んだ気がした。 けどそれは本当に一瞬で、特に気にもしないで晃と雑談しながら時間は過ぎて。 「……なあ、」 「うん?」 「お前、なんか顔赤くね?」 「…うん?」 晃の一言に首を傾げる。 赤い?顔が?俺の? ぺたぺたと顔を触れば、確かに熱を持っていて。 自覚した頃に、今度はしっかり、ぐらりと視界が歪んだ。 「…あ、れ?」 「は、…え、ちょ、」 がったん、と音がしたと思えば、晃が身を乗り出してて。 俺の体が、視界が、世界が、横に傾いた。 え、なにこれ。 じわじわじんじんと体が熱を帯びていくのがわかる。 晃の手が、俺の体を支えようと肩に触れた瞬間、電気が走った。 「ぅ、ひゃっ…!?」 「…っ!?」 …変な声出た。 泣きそう。 びくっと晃の体が強張って、目を見開いてる。 目を合わせる。 あわせてるはず。 だって、なんか、これは。 「………」 「………」 晃の目が語ってる。 や ら れ た。 [←][→] [戻る] |