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短編集(~2019)
12
 

 クロスケは周りの雰囲気を感じ取れずに、ただ頭に血が昇って茹で蛸状態。
 かろうじて見える鼻から下が真っ赤だ。



「バカにしてんのは真琴の方だろ!!息抜きだって必要だろ!!」



 ぶっは。やべ吹き出しちまった。
 おい律、呆れた顔するな。見えてんぞ。



「おっまえ、…何のために週休二日なんて制度があるんだ?今まで生徒会役員は、任された仕事を熟して、授業にも出て、休日は他の生徒と同じように自由に使っていたが?」



 それが出来る力量が奴等にはあるし、その自由時間に何をしようと勝手。だからセフレなんかがいた。親衛隊も荒れていなかった。不純性交遊はあるが、それなりに学園は安寧だったってことだ。



「それを、お前が奪ったんだよ。学園の保たれてたもんを狂わせた」

「ちがう!!」

「違わない。現にお前も、生徒会補佐になってから仕事をしたか?とりあえず聞くが、一番最近の、お前が補佐になってからの生徒会と風紀合同会議の議題はなんだ?」

「そ、れは…っ、ぶ、文化祭について!!」



 おい、今9月頭だぞクロスケ。
 文化祭は12月中旬、会議は早くても9月末、通常なら10月だ。



「残念はずれ。前回の会議は8月末の夏休み最終日に行われた。お前らがどっかで悠悠と遊び回っていた時だな。議題は、学園の秩序の乱れについて。言わずもがな、お前らのことだ」

「うそだ!!役員に知らせないなんてあり得ないだろ!!」

「知らせたけど?夏休み前の放課後、いつもなら生徒会室で仕事をしているはずの会長サマ宛てに、合同会議の通知書を、風紀委員長直々にな」



 その風紀委員長が見たのは、生徒会室でひとり黙々と仕事をする生徒会会計の牧村巧の姿だったがな。
 一応、巧には会長に連絡させたが、メールを見てはいたのか、会長の顔は思い出したように目を見開いてる。おせぇわ。



「そんなのっ言い掛かりだ!!」

「なにが言い掛かり?証拠なら今し方スクリーンで見ただろ。生徒会室に行っても、その場で仕事が出来るはずなのに、ソファーに居て、さわいで汚して邪魔して、お前はそれを目の前で見て、それを行っていた当事者だ。
お前の言う、「会長たちは空いた時間に仕事をしている」ってのは、お前を構う事なんだな?ごくろうさん」



 ギリッと歯軋りが聞こえてきそうなほどに噛み締めているのか、クロスケの口元は歪みに歪んでいる。


 すると突然、クロスケは自らの髪の毛をむしりとっ───じゃなくて、不潔な鬘を鷲掴みにして、床に叩きつけた。

 え、そのアクションいる?


 しかし一般生徒には効果があったようで、鬘を取って現れたのは生徒会役員と並んで違和感のない美少年だった。

 美貌が台無しだけど。



 はっきり見えるようになったその表情は歪み、俺を睨んでいる。茹で蛸になって。



「真琴お前…っ、さっきから、偉そうに言ってるけど!!なんなんだよ!!」



 やだもう名前呼ばないで。天国のお母様から頂いた大事な大事な名前なんだから。


 静まり返る講堂内では、ほとんどの視線が俺に集中している。
 偉そうに、ね。確かに偉そうに言ったさ。だって偉いもん。なんつって。



「ああ、申し遅れました。俺は学園専属教育委員会、調査担当員の平塚真琴です」



 にっこり笑ってお辞儀をして、上げた目で見たのは、講堂にいるほぼ全員の驚愕の表情でした。


 

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あきゅろす。
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