短編集(~2019) 11 ぶつり、と映像が切れ、講堂に明るさが戻る。 見渡せば、生徒はみんな唖然呆然、当事者は顔面蒼白。クロスケは硬直。様々だね。 「───今、スクリーンで見ていただいた映像は、この半年間のほんの一部です」 その場に立ち上がり言うと、すべての視線が向けられた。驚くよね、分かるよ。 「ま、真琴!!?」 そうです真琴くんです。 クロスケを見て、両側の役員を見て、俺は笑みを浮かべた。 「ご存知かと思いますが、俺はずっと彼らと一緒に居ました。無理やりですが。あれはその時に撮影したものです」 「無理やりなんて嘘を言うなよ!!なんでそんな最低なこと!!」 「黙れクロスケ。」 そう、そう。びっくりしたね、はいはい。 傍観していただけの生徒も、俺に制裁をした親衛隊も、教師も。 理事長、巧、律以外はみんな、みんな驚きだね。でも、これが俺の仕事だから。 「これが、お前の言う“証拠”だ。他にも沢山ある。今回の件の当事者である、生徒会会長、副会長、現生徒会補佐、会長と副会長の親衛隊、その他関与した生徒に関する資料は、まとめて理事長にも提出済みで、あんたたちの家にも届けた」 誰かが、小さな悲鳴を上げた。 「「皇帝」からも説明があったが、生徒会役員が任された仕事を全うせず、授業にも出ず、恋愛にかまけている事は、一般生徒のほとんどが周知だ」 「真琴までそんな事言うのかよ!!高校生なんだからトモダチと遊んでなにが悪いんだ!!仕事ばっかりで、トモダチすらいねぇ奴らなんだぞ!!」 「遊ぶことを悪いと言ってるんじゃねぇんだよタコ。誰と何しようが知るか。お前の言うトモダチってのは、てめぇにかまけて任された事のひとつも責任持てねぇ嘘つき野郎どもかよ」 「嘘つきはお前だ!!何も知らないくせに最低だ!!」 やっべえ、DJ風の曲思い出しちまった。笑いそう。つか巧と律、笑ってんじゃねーよ肩揺れてんぞ。 「はぁ、散々俺をつれ回しておいて、トモダチとか言って、今度は嘘つきか。最低だって自分のこと言ってる?」 「そういうこと言ってんじゃない!!こいつらのこと信じてねぇし、外見しか見ねえヤツらばっかで、本当のこいつらを知らないで、好きとか言って…!!」 「おいおい、何の話をしてんだ?俺は、この学園に入学出来るような御曹司だか何だか立場のある人間が、人から認められて推挽されて、生徒会役員として生徒の上に立つことを受け入れて責任を自覚してるハズの奴等が、高校生にもなって、恋愛と仕事の両立、学生としての意識と秩序を守れてねぇって言ってんだよ。 そんな奴等を誰が信じる?認める?奴等が仕事してないことは、そばにいたお前が一番よく知っているハズだ。夜通し遊んで、泊まって、また遊んで、授業受けず四六時中一緒にいて、いつやってる?寝るなって言ってるのと同じことだ。 トモダチっつーんなら、甘やかしてんじゃねえよ。高校生は大人になる一歩でもある。誰も遊ぶなとは言わないだろ。だが奴等は特に継ぐべき家と、将来背負うべき部下が居る。部下の生活も背負うことになる。お前はその人間の未来を、将来を奪う行動を取ってんだよ。 そんで、お前にかまけて仕事も授業も出来ない奴等に、親は会社なんか任せられない。そんな奴等が人の上に立つ?バカにしてんのか」 クロスケよ、左右を見ろ。 一番顔色悪い二人が、自分達の行動を思い返して絶望している面を。 [←][→] [戻る] |