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短編集(~2019)
08
 

 ───生徒総会。
 半年に一度集まる大規模な高等部の集会で、病欠以外の欠席は基本的に認められない重要な会議とか。
 全校集会とは違って、進行も生徒。
 教員はクラス担任だけで、理事長も稀に参加するが、ほとんど不参加。生徒による生徒のための、ということだ。


 だが今回は、理事長が同席している。
 後ろの隅で穏やかな笑みを湛えているが、俺からすればその笑みの裏側のどす黒さが溢れているようにしか見えないな。



 だだっ広い講堂に半円を描いて固定設置された木製の机と椅子があり、凡人から美形(可愛い系からワイルド系)まで居るが、最近の金持ちの坊っちゃんというのは顔面偏差値が上がっているらしい。

 その中でも一際目を引くのが、役職持ちの生徒と、名前や顔が有名な生徒。
 滅多にお目にかかれない生徒が間近に居るんだから、ミーハーな生徒からしちゃ、総会は素晴らしいイベント扱いなんだろうが、残念だ。
 いやはや残念だ。
 ある意味、思い出のイベントになるだろうよ。



 ああ、ちなみに生徒会はちゃんと全員揃って指定席にいる。
 クロスケ?なーんかいつの間にか生徒会補佐扱いになっててさあ、生徒会専用席にちゃっかり会長と副会長の間に座って拡声器全開なんだよね。

 許可したのは「皇帝」だけど何か。
 「皇帝」に許可したのは俺だけど何か。


 一緒に居たいっていうなら、居させてやるよ、どこまでもな。




『───高等部に在籍する全生徒の皆、日々の勉学に勤め、こうして今回も総会に集まってくれたことに感謝する』



 静まる講堂内で、スピーカーから流れるのは、最近頻繁に目撃されるようになった「皇帝」の声。
 無表情も無表情。ホントに感謝してんのかよって思うほどだが、ミーハー集団はそこに惚れているようだ。



『今回の総会は、最近高等部の秩序が乱れている事に関する事だ』



 波のようにざわめきが広がる。
 抑揚のない声が勘にさわるのか、会長と副会長の眉間にシワが寄っている。
 クロスケはクロスケで、この雰囲気に飲まれたか「皇帝」に見惚れているのか、珍しく拡声器の電源は切られているようだ。いつもそうならいいのにな。



『最近、よく俺の姿を見かけているとは思うが、あれは最終確認のためだ。学園が荒れ始めてから昨日まで約半年見ていたが、改善の動きが見られない為、今回の会議内容を変えさせてもらった』



 困惑、吃驚ってところか。生徒は互いに顔を見合わせたり小声で何かを話している。
 驚いたのは、総会は本来別の内容だったってことで、困惑は最終確認という言葉にあるんだろう。

 巧以外の生徒会役員は、その言葉に驚いているようだけれど、自分らのことだとは思ってないのか。自覚なしか。すげえな。



『皆は大体予想していると思うが、学園がこのように乱れ始めたのは、半年前からだ。それまで学園は安寧を維持していたし、秩序も守られていた。───今期の生徒会も風紀も、自らの職務に責任を持ち、立場を自覚し、それを全うしてくれている、と、俺は思っている』



 だが、と「皇帝」はそこで言葉を切り、一般生徒とは別の、自分が立っている壇上の隅にある生徒会専用席に顔を向けた。



『それはどうやら、俺の勘違いだったらしい』



 圧力。
 それは、抑揚のなさもあるが、怒りも呆れもない、ただ見るという行為による、静かな圧力だった。
 その圧力を感じとれるのは、自らの行為に自覚があるという証拠。


 顔色のよろしくない、会長、副会長、書記とかな。


 

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