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短編集(~2019)
06
 

 電話をする時、時間はいつも、日付がかわるちょっと前になるのが日課になってる気がする。



『いいのか?』

「ん?」

『俺達の遊び終わらせて』



 あーね。

 入学が決まって、どういう学園なのか調べて、美形が持て囃されて崇拝される宗教団体よろしくそれが黙認された上に蔓延してるって知って、こいつがそういう対象になるということも、俺がいつも通り一緒に居て過ごしていたらどうなるかってのは予想してた。

 とりあえず最初は慣れるためにも平和に過ごしたかったし、噂だけでは分からない学園の内部を知るのにも、正直一緒に居たら煩わしいものしか呼ばない。


 なら最初から、他人のふりをすればいい。
 俺の可愛い癒し系は入学式に俺を見つけてから嬉しそうに毎日電話してくるけど、電話だけならべつにね。
 会いたい連呼されるけど、一回でも会うとダメだからさ、そういうの。


 てなわけで、俺達は関係ない人間としてここに入って、俺は人畜無害な一般生徒として、ヤツは情報収集も兼ねて上にのしあがってもらった。
 案外すんなり上に行くもんだから、呆気なかったけど。

 顔がイイヤツはイコールでハイスペックなのか?笑えねーわ。


 まあ、こいつが無干渉過ぎて、あんまり意識されてないのは良いんだか悪いんだか。
 いや、認識はされてるんだけど。
 神出鬼没に無関心とくれば、肩書きだけのお下がりだと思われてるかもしれないしな、生徒会には特に。あいつらプライドだけはかなり高いし。



「ま、折り返しだし、ずっと無関係とかはね、俺も癒されたいし、何も気にしないでいつも通りに会って話がしたいしな」

『そうか、なら、動いて良いんだな』

「うん。とりあえず、少しずつ顔見せるくらいから再認識してもらおう」

『ああ、俺も退屈になってきたしな』

「えー、やっぱあの曲ダメだった?」

『まあ、耳に残るくらいには不快だった』

「まじで。やっぱお昼の放送に流そうぜ、あれ」

『笑えるかもな』

「メシを吹き出すヤツが何人出るか楽しみだ」

『そうだな』



 よし決まり。
 あとは、巧に連絡して情報まとめてもらうか。もうやってんだろうけど。



「じゃ、巧に電話するわ」

『ああ、わかった』



 電話を切り、履歴から巧の番号をプッシュする。
 登録されてる名前は、ずばり「癒し系」。そのままじゃん。



 呼び出し音二回で出た巧は、そりゃあもう嬉しそうに俺の名前を呼んだ。



「今大丈夫か?」

『うん。待ってた』

「まじか。そろそろ動くから、資料まとめてくれる?」

『大体終わってるよ』

「さすが牧村巧。お前の有能さなら、本来は生徒会長はお前なんだがな」

『煩わしいだけだから』

「そうだな。皇帝サマはどうすんのかねえ」

『立場としてはそろそろね、結構、生徒たちは不安がってるよ。皇帝サマはどうしたのって』

「だろうな。下から見るのも、もう充分だし」

『掃除するの?』

「ああ、そういう条件だから」

『知らせに行く?』

「明日な」

『準備しておく』

「さんきゅー、頼んだ」

『もちろん。真琴はおれのご主人様だから』

「お前らはなんなんだか。嫁だのご主人様だの」

『嫌いじゃないでしょ』

「嫌いじゃないな」



 

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