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短編集(~2019)
休み時間にイケメン(達)観察をしよう。
 


 同じクラスに美形が居る。
 緊張の入学式から一年、オレは新たな緊張と向き合っていた。
 そう、同じクラスに美形が居るのだ。一人や二人ではなく、5人もいる。見事にまとまっている。


「なあなあなあ、Kストアの新発売のスイーツ見た!?」


 ばんっ、と少し距離感のある机を叩く音のさきに目をやれば、ワックスで弄った長めの焦げ茶色の髪が揺れた。


「そういや見てないなー」


 その向かいの席に座る、色気を垂れ流している美形が天井を見上げる。


「確か発売して一週間くらい経ってるよね。珍しいね、買えてないなんて」


 やわらかい声の、女子のような外見をしている男子生徒が言う。


「俺、見たぜ」


 そして、クラス一、いやこの学校一恐れられている(らしい)不良が、興味なさげに言った。

 焦げ茶色の髪の男子生徒を中心に、前後と右側に美形。四人全員美形。
 くっそ羨ましい。少し分けてほしい。あのくすみの見えない肌とか。


「どこで!」


 真ん中の男子が勢いよく後ろの不良に食らい付く。若干不良がびびったのをオレは見てしまった。レアもんだ。

 迫っている男子は甘党で、何人もの女子を泣かせてきたとかなんとかいう変な噂がある。
 まあ、たぶん、あんだけ甘いもん食いまくってるくせに細身だし肌きれいだしで精神的苦痛を味わったんだろう。
 大抵の会話が、どこぞのコンビニやスーパーの新発売スイーツだったり、なにかとスイーツ関連の話をよく聞く。

 いやまて勘違いすんな。
 別に好き好んで毎回聞いてるわけじゃない。聞こえてくるんだ、不可抗力だ。


「…俺んちの近くのコンビニ」


 不良の若干引き気味な声。


「よし、帰りいこう!一緒に帰ろう!」
「は…!?」
「おーう、ダイタンだな、諒ちん」
「瀬戸くん、変なことしたらぶっ飛ばすからね」
「ちょ……、はぁ…!?」


 最近思う。不良生徒でありながら、つくづく不憫な男だ。
 一時期からつるむようになったらしい不良は、どうやら前の席の男子、無自覚イケメン仁科に熱をあげているようだ。
 オレはそういう恋愛に偏見はないから、ガンバレ、と心中でエールを送っていたりする。


 

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