3 俺が大好物の唐揚げを食べていると 「なあ…桜火」 「う?」 蒼がちょっと悲しげな顔をして 「…マジであの学園に行くのか?あんな…閉鎖的な学園に。そう簡単に抜け出したりできないんだぞ?つーかチームどーすんだよ」 「そーだよー!!桜火くんいなくなっちゃったらみんな寂しがるし、あの学園だなんて知ったら絶対心配すると思うよー?」 蒼と彗の言葉からわかるように、俺は春休みが終わったらある学園に入学する。金持ちばっかが行くような所だけど、母さんと父さんの昔からの知り合いが理事長をしていて、試しに入試を受けてみたら見事に合格しちゃったからその学園に通うことになった。 ちなみに点数がどうだったか聞いたら、全て満点で主席合格だったらしい。難しいって有名な所らしいけど、結構簡単な問題ばっかだった気ィするけどなぁ。 「だって学費免除になるんだぜー?特典もつくって言ってたし。これは行かなきゃ損だろ。チームの奴には向こうの寮に入る前の日に話すからさ。学園の名前を伏せとくし」 チームっていうのは俺が総長をしてる《cherry》っていう不良グループ。チームなんて作る気なかったんだけど、なんかたくさん集まっちゃってこれはまとめなきゃヤバいかなー、って思って俺の名前に入ってる"桜"を英語にした《cherry》をグループ名にして作った。 今じゃあこの辺一番の不良グループだ。 「みんな認めないと思うぞ?桜火が…、"夜桜"がチーム抜けるなんて。俺も認めたわけじゃないし」 夜桜(ヤオウ)っていうのは俺の通り名。由来は知らない。ってゆーか別に知らなくてもよかったから聞いてない。 「…蒼。お前だってさっき自分で言ったろう?簡単には抜け出せないんだ。チームに顔も出せない総長なんて、これから先みんながついてきてくれる保証なんてないだろうし、何よりケジメがつかない。だから…俺は抜ける。決めたんだ」 俺が蒼の目を真っ正面から見て言うと 「……わかったよ。後のことは任せろ。でも、チームの奴等が桜火が、総長がチームに顔出せなくても総長はお前だけだと言ったら、トップのイスは残しておくからな」 そう言って滅多に見せない柔らかい優しい笑みを浮かべて、俺の頭を撫でた。 「…ありがと」 俺、いい弟を持ったなー。 「桜火くんかーわいい笑顔浮かべちゃって、僕のこと忘れてないー?」 彗が顔をふくらませて言った。 「忘れてないって(笑)蒼も彗も大事な弟で、大切なチームの仲間だからな」 聞いての通り、蒼も彗もチームのメンバーだ。しかも幹部。 二人共通り名がつけられていて、蒼は水葵(スイキ)、彗は春蘭(シュンラン)と呼ばれている。 俺が自分で、あ、これちょっといいこと言ったんじゃね? とか思ってたら 「もう片付けちゃうわよー」 母さんが殆ど食べてない俺に言った。 「ちょ、待ってーっ!!ってゆーかお前ら何ちゃっかりご飯済ませてんだよー!!!」 「だって桜火食べるの遅いし」 「ずっとしゃべってたしー?」 「「どんまい」」 くっそぅ… 薄情な弟達め……(泣) 弟達をちょっとうらみながら俺は急いで昼ごはんを食べた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |