12.探しものは何ですか
「おはよーござい…ます、なまえ何やってるの?」
麻衣が出勤し、最初に見た光景はなまえが麻衣の事務机の下に潜って何かしている風景だった。
麻衣が声をかけるとなまえは机の下から紙を手にして出てきた。
「おはよう!麻衣ちゃん、ちょっと・・・探し物してるの!」
そう言うと、今度は本棚をあさり始めた。
「…麻衣、気にするな」
なまえの奇行に驚いて立ち尽くす麻衣に、ナルは何事も無いように言った。
「・・・うん」
麻衣は机に荷物を置いて、紅茶を入れるべく給湯室に向かった。
「ねえ、ナル?あといくつ?」
「あと2つ」
紅茶を入れたティーカップを3つ持ってきた麻衣はナルとなまえの会話に首を傾げた。
「いったいなんの話してるの?」
紅茶をテーブルに置き、ナルの横に座った麻衣は彼に質問した。
「あったわ!!」
ナルが口を開こうとした時、なまえが卵の形をした紙を頭の上にかかげ叫んだ。
「そうか」
「全部、5枚!全て見つけたわ、交換してくれわよね?!」
「約束だからな」
跳ねたりスキップするなまえの喜びようにナルは苦笑し、一端所長室に入り、すぐに戻ってきた。手には包装用紙に包まれた何かを持っていた。
「ほら」
手渡しでなまえにそれを渡すとナルは先ほどの本の続きを読み始めた。
なまえは鼻歌を歌いながらナルの向かいに腰を下ろすと包みを開け始めた。
それを麻衣は、それを興味津々で見ていた。
「えっ?」
包みから出てきた物を見て麻衣は疑問符を浮かべた。
出てきたのは何十枚もの長方形のチョコレート板だった。それをなまえは大事そうに抱えている。
疑問符だらけの麻衣を見かねたナルは口を開いた。
「なまえはその会社のミントチョコが好物なんだ」
「へっ?そうなの?」
うんうんと首を縦にうなずいているなまえは至極嬉しそうに笑顔だ。
「でもなんで・・・その卵の形の紙を探していたの?」
「あぁ、それはね。イースターだからなの。本当はね、綺麗に模様を描いたり、絵を描いた卵を交換するのだけど、今年は時間が無かったから、ナルが――」
「なまえの紅茶が飲みたい」
なまえの言葉を遮って、ナルが言った。
「わかったわ」
立ち上がったなまえだが、何を思ったか麻衣に近づき、耳打ちをした。
「何もないと私が寂しいだろうと思って準備してくれたみたい」
「なまえ!」
ふふっと微笑みを浮かべなまえはキッチンに消えていった。
「ナルが照れてる・・・」
ニヤニヤと笑みを浮かべた麻衣にナルは鋭く睨んだが、そんな後では何の効果もなく、麻衣はその後もからかい口調で話しつづけた。
もちろん、そのあと事務所が極寒地帯になったのは言うまでもない。
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