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colorful story
昔の夢

「また君か、」

『ふふふ、こんにちは。そろそろ、お困りだと思いまして』

「君は、一体何者なんだ?」

美紀は妖しく笑うだけだった。




「はい、オッケー。敦賀くんも紗羅ちゃんも次のシーンまで休憩してていいよ」

『はーい』

「お疲れ、紗羅ちゃん」

『敦賀さん…お疲れ様です』

「大丈夫?なんか具合悪そうだけど、」

この間、美紀として過ごしてから数日。
今日はドラマの撮影。

(頭、いたい…)

久しぶりの現場にも関わらず紗羅の気分は最悪だった。

この間、尚に会った後に拓磨に電話して迎えに来てもらうまでに降ったまさかの大雨。
ずぶ濡れになってしまって、慌てて雨宿りしたけど服がびちょびちょに。

車をとばして来てくれた拓磨さんに怒られ(そりゃあもうめちゃくちゃに)、昨日の雑誌撮影が終わって気が抜けた瞬間から頭がガンガン。

いわゆる、風邪ってやつかな…

でもでも、今日は久しぶりの現場だしみんなに迷惑かけないように頑張らないと…!


具合の悪さを悟られたくなくて端の方に座り込む。


あたしがあの感覚に陥ったのはあの撮影の日だけ。
結局何だったんだろうな…

あぁ、ダメだ。
頭がガンガンしてこれ以上何も考えらんない。
あたし、結構重症かも…


「紗羅ちゃん、スタンバイしてくれ」


遠くから監督の声が聞こえる。

『うわ、』

重い足どりで立ち上がった瞬間、視界が歪んだ。









夢をみた。
懐かしい、紗羅が忘れたかった過去の夢。


「すぐに戻ってくるからちょっと待っててね」

しんしんと雪が降る寒い冬の日、ある1組の親子の会話。

『……うん!』


「ごめんね、紗羅…愛してる」

……わかってた。
待ってても無駄なことくらい。

『……早く、帰って来てね』


小さな呟きは、誰にも聞かれることなく消えていく。

しばらくして帰ってこない母を探しに歩いたが見つかることはなく紗羅は座り込んだ。

あぁ、あたしはやっぱり捨てられたのか。
絶望を胸に抱きながら。
愛、って何?

あたしを愛してると言ったお母さんは帰ってこなかった。
愛、なんてこの世には結局存在しないんだね。


「ちゃん…、紗羅ちゃん!」

『敦賀……さん…?』
「ああ、よかった目を覚まして。凄いうなされてたから。それに…」

紗羅は何ですか、と聞く前に目線でわかった。
敦賀さんの目線は紗羅の目元。
ああ、夢とリンクしちゃったのか…

『大丈夫です、ちょっと怖い夢見ただけなんで』

今だにボロボロと流れてくる涙は止まらない。
けど、こんな私情で敦賀さんを煩わせるわけにもいかないし。

素早く涙を拭いて微笑んでみせるといきなり腕を引かれた。

『うえっ?!』

気づけばあたしは敦賀さんの腕の中にいて。

「大丈夫。まだ時間はたっぷりあるんだから落ち着くまでこうしてればいい」

背中に回された手は優しくさすってくれて温かかった。

『あ、りがとう……ございます……』

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あきゅろす。
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