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colorful story
3<不破尚Side>

<不破尚Side>

あ〜くそッ!
なんてむかつく日なんだ今日は!!
朝っぱらから付けてたテレビで勝手にやってた占いの順位は最悪だったし(付いてただけだ、わざわざ占いを見た訳じゃねーぞ!)、嫌なやつの顔をテレビで見ちまうし!

大体なんなんだ、あの女は……ッ!




朝、くそ眠いのも我慢して祥子さんに起こされる。
そして仕事。
今日はミュージック番組の収録があって向かったテレビ局。
そこで目に入るのは今期1番ヒットしてるドラマのポスター。
主演の名前?そんなの知らねー。
ただ俺の視界に写るのは紗羅、という文字。
主人公の親友役だっけな…


俺が紗羅を知ったのは少し前のこと。
きっかけは祥子さんに見せられた1本のPVだった。

「尚、最近人気が出てきたグループのPVよ。一応どんなものか目を通しておいてね」

「えー、いいよ。俺負ける訳ないし」

「そんなこと言ってないで、ほら流すわよ」


祥子は運転しながらパソコンにCDを入れて再生ボタンを押した。

〜〜♪

音楽が流れ出す。
やっぱたいしたことねーじゃん。

その時だった。
画面に写った二人の少女。
高校生ぐらいだろう。
とても仲のよい二人。
でも突然幸せそうな日々に終わりが訪れる。
一人が引っ越すのだ。

最後の一日、二人は色々な場所で遊ぶ。
その時の二人はとても楽しそうで、幸せそうな笑顔。
やがて列車の時間が来て一人が乗る。涙を流しながら。
もう一人、紗羅は笑顔で手を振る。もう一人が笑って行けるように。

列車の発車ベルが鳴って列車が行く。
紗羅は列車が曲がるまで笑顔で手を振りつづける。
列車が見えなくなった途端、頬を伝う一粒の涙。
そして崩れ落ちるようにしてしゃがみこんで泣く。

〜♪さよならは再会の約束

そこにメロディーが流れて曲が終わった。



「……ョウ…尚…?」

「ん、ああ…」

「なに、そんなに今の歌よかった?」

「違う。そんなんじゃねぇよ……」

そんなんじゃねぇ。
歌なんて、やっぱたいしたことねぇ。
問題なのはPVだ。
いやPV自体もストーリーはたいしたことねぇ。
気になるのはあの一人の女だ。
綺麗な笑顔が泣き顔に代わった途端、不覚にも目を奪われた。
それほどまでに綺麗で儚いものだったから。

「着いたわよ。今日も頑張ってね」

「……ああ」

あの泣き顔が頭から離れなかった。




「不破くん、お疲れさま」

ミュージック番組の収録が終わる。
同じ局なら向こうのドラマも収録中かと少し期待していたが今日は休みらしい。
ついてねぇな。

ああ、もう夜か。
祥子と晩飯を食って荷物を取りにアパートに戻る尚。
キョーコいたら面倒だ、と思いながら。



幸いキョーコは帰ってなかったものの、途中で帰ってきてうるせーし、テレビではあの敦賀蓮なんかが俺よりも人気あるとかぬかすし、あ〜もう有り得ねぇだろ!!

ーバァン

尚はキョーコの制止を背にイライラしながら階段を降りる。
だから気付かなかった。

『いたっ…!』
「……ってぇ!」

いきなりの衝撃に驚くと足元に転んでる少女。
こんな時に……ッ!!

「……チッ。悪かったな、」
『いえー、』

転ばしてしまった(勝手にふっとんだんだが)罪悪感から謝って手を伸ばすと間の抜けた声が返ってきた。

答えながらも軽く笑った少女に紗羅の笑顔が重なる。
………いやいや、なんで重なるんだよ!!

『……………あ!』

なかなかとられない手に痺れを切らしていると何かに気づいたらしい。
やべぇ、これ不破尚だってばれたか……?


「なんだ、俺のファンだったらサイン書いてやるよ。ただし言っておくが俺は断じてこんな所に住んでる訳じゃないからな!」

相手が何か言う前に一気に言う尚。
こんなとこに住んでるなんて思われたら俺のイメージ台なしじゃねぇか!

『…………サイン?いや、そのケータイ同じだなって思って。ほら、色違いですよ』

………は?ケータイ?
手元のケータイを見れば確かに同じ機種の色違い。
てか、ちょっと待て、そんなのはどうでもいい。
この俺を、知らないだと?

「なんでもねぇ!」

憤りよりも恥ずかしさが勝ってそれだけを言うのが精一杯だった。

ああ、ムカつく!!
今日はなんて日なんだ!!

尚がたまたま見たドラマでこの時の女が紗羅だったと知るのはもう少し先の話。

(嘘だろ……)

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