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白と黒
黒き陰


「…どういう事だ?このままアイツ等を野放しにして…大丈夫なのか?」

紫の髪の女は言う。

「まー、いざとなったらどうにでもなるんじゃない?」

クリーム色の髪の女はニヤリと笑う。

「…だが、このままだと、国民も恐怖に耐えがたいだろう…どうにかしなくては。」

藍色の髪の男はいう。

「…私が行く。」

紫の女は立ち上がり、剣に手を当てる。

「…そんなに急がなくても良いと思うけどなー、相手は子供だし自覚もしてないみたいよ?」

クリーム色の女はえつきをしながら、優雅に構えていた。

「カタルシア…お前はどっちの味方だ。」

紫の女はカタルシアを睨み付けるが、全く動じない。

「そりゃこっちの味方よ?でもまだ早いと思った、ただそれだけよ、瀬津螺もそんなにカッカしないの。」

カタルシアはクリーム色の髪に手ぐしを一回通す。

瀬津螺は苛立ちを隠しながらまた、元の席へ座り、藍色の髪の男を見る。

「…どう思うんだ?昌音…。」


昌音は悩みながらもこう答えた。

「…様子見は引き続き必要だとは思うんだ…だが、相手が相手なだけに下手に動くのもいけないと思う、まだ、発動もしてないみたいだし…報告だけは国民にしておこう。」

「…そうか…。」

「ただ…。」

「?」





昌音は顔の前で手を組ながら真剣な顔でこう言った。




「今日あの子に会ってみたらどうだ?」

















その頃森の中では

「テメー!何回言ったら分かるんだ!



ハリスの声で鳥たちは一斉に飛び立った。


「ひ、ひぃー、はーちゃん怖いよぉ〜」

アリアは木の陰に踞り、顔だけを出していた。

「もー、来るなってあれほど言っただろうが!!!何で来てんだよ!!」

ハリスは仁王立ちをして、どす黒いオーラを放っていた。

「で、でもね!今日はクッキーを…「クッキーはいらねー!」…ほ、はい。」


舌打ちをしながら、ハリスは後ろを振り返り、ずしずしと歩き、家の中に入ろうとした。

「で、てもね!とっても美味しいと思うよ!だから一緒に食べようよ!」

「いらねーよ!」

「食べようよ!」

「いらねー!!!」

「食べようよ!」

「…。」

「?」

ハリスはスゥと息を吸い、アリアの近くに行き一気に声を張り上げる。

「いらねーっつたらいらねーんだよ!良いからとっとと失せろ!分かったな!!!」


アリアはその迫力に押され、またしても身を縮めた。

「…。」

アリアの目には涙が溜まり、とうとう泣き出してしまった。

「う、…う、グスン。」

「な、なんだよ泣くなよ…。」

「だ、だって、はーちゃんクッキー食べてくれないんだもん!」

「…。」

「ぐすん。」


「…あー!もー!わかったよ!!食えばいんだろー!食えば!その代わり!さっさと帰れよ!!」

「あ!ありがとう!」

(あー、イラつく!イラつく!)

アリアは涙を拭き、嬉しそうに鞄からクッキーを取りだし、ハリスに渡すと紅茶の葉も取り出した。


「なんだ?これ?」

「紅茶の葉だよ!これにお湯を入れたら美味しい紅茶が出来るんだ!」


「…ふーん、ま!良いからさっさと帰りな!」

「もー!はーちゃんどーして帰れ帰れって言うの!?」

「教えて欲しいか?」

「うん!「お前が嫌いだから」え!」


暫しの間呆然とするアリアを無視し、ハリスはクッキーを食べながら家に入って行こうとした。

「もー!はーちゃん!!遊ぼうよ!!」
「遊ばねーよ!」

「うぅ…、私たち友達でしょ!!」

「友達じゃねーよ!」

「うぅ…。」

ハリスは玄関の戸を開けようとしたとき、後ろから掛って来る音が聞こえ、振り向くとそこにはアリアが満面の笑みで手を差し伸べていた。

「じゃー今からお友だちになろう?」

ハリスはその手を見るなり、顔を赤くし、俯く。

「だから。」

握り拳を作り、顔を上げ一気に怒鳴り付けた。

「お前は!どーしてそーなるんだーー!!!」

「わー!はーちゃん怖いってばー。」

身を縮ませるアリアにハリスは出る言葉もなく、玄関のドアを開けて、入っていつた。

「…はーちゃん…。」

アリアはしゅんとしながら、鞄を持ち、その場を後にした。


ハリスは玄関の扉に寄っ掛かり、アリアから貰ったクッキーを眺めて、小さく呟き、ドアに鍵をかけた。

「…友達なんて…いらねーよ、バカ。」




その頃アリアはというと…。








また迷っている。


「どーしよぅ、せっかく来るときはこれたのに…はー、はーちゃんにも怒られたし…うぅ。」

しゅんとなっているアリアは気づかなかった。

近くにいるカラスがアリアをじっと見ていた事に。


その時だった。

アリアの斜め前方から人の歩く音が近づいてきた。

「…?はーちゃん?」

アリアもその音に気づき、音の鳴る方を見つめた。

「…。」


がさがさ!

「だ、誰?」


「…。」

音の鳴る方から姿を現したのはみたことのない綺麗な顔立ちのお姉さんだった。

紫色の髪を腰まで下ろし、左には剣を付けていた。

「…あ、あのぅ…。」

「…。」

無言で威圧され、掛ける言葉が見つからず焦っているアリアに女は話しかける。

「紹介が遅れた…私は黒の国騎士団団長の瀬津螺だ、お前が白の国の女王の一人娘、アリアだな。」


「…は、はい…。」

「…そうか、ならいい、またそう遠くないうちに会うだろう…。」

「え?」

瀬津螺はそう言い残し、近くにいた烏を呼んだ。


そのカラスは大きくなり、瀬津螺はそれに乗り、颯爽と空へと上がり見えなくなっていった。

「…何なんだろう?綺麗な人だったなー。」

アリアは空を見上げながら、あの人の顔を思い出していた。

「そ!そうだ!!早く森を出ないと!」

我に戻り、アリアは慌てながら森を抜けようとした。その頃…上空では瀬津螺ともう一人の女がいた。

クリーム色の髪をなびかせ、帽子が飛ばされないように押さえながら話している…それはカタルシアだった。


「どうだった?あのこは。」

「…カタルシアの言っていた通り、まだ本人には自覚が無いらしいな…まだ大丈夫だろう…それに。」

「あぁ、あの男の子?」

「…厄介になりそうだな…。」

「そうねぇ、アリアちゃんとあの子が絡んだら面倒になるでしょうね、きっと。」

「…それに女王も何故言わないのか、検討もつかない、もうそろそろ言っても良いと思うのだが、それにアリアがあの男の子と絡んだら元もこもなくなるだろう?」



「…それがアイツの目的だったりしてね。」

「…なに?」

「…だって、あの子を使えば、きっと女王にとってメリットはあるわ、まー、一歩間違えたら終わりだけど。」

「…まさか…そこまで…。」

「分からないわよ?」

「…。」

「さぁて、帰りましょ?」

「あぁ。」

二人は向こうの国へと戻っていった。

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