白と黒
予期せぬ展開
カタルシアは昌音が座るのを確認すると、今までに起きた事の詳細を二人に伝える。
二人は今人間界にいること。
少女事態何も自覚していないこと。
向こうで犠牲者が出たこと。
また、少女の事を知っているのはごく一部の者ということ。
それらを全て話終ると、カタルシアは「これで私から言えることはおしまいよ」といいながら椅子に深く腰かける。
その話を聞いた二人は深刻そうな顔をしながら悩み始める。
その時瀬津螺が質問を投げ掛けてくる。
「どうして二人を人間界に送ったんだ? 向こうが奴を殺したらこちらにとっても都合か良いだろう」
少し冷たいように感じる質問にカタルシアは淡々と答える。
「もし、あの子を殺したならまた奴等はあの魔法を他の人に移すかもしれない……そうなったらまた振り出しに戻ってしまうし、こちらとしても女王の目の付かない人間界に居てくれた方が良くはない?」
カタルシアの最もな意見に瀬津螺は腕を組み考え始める。
「だがこちらの目も届かなくなる……か」
昌音は顔の前で手を組み、真剣な眼差しで独り言の様に話す。
「そうね、でも魔力はまだ溜まっていないようだし、発動するのはまだ早いと思うわ、ただ、あっちで発動されたらどうもできないけれど」
そうカタルシアは言うと烏が鳴き声を上げる。
カァァア!
「だが、このまま野放しには出来ないな、こちらの問題を人間界に担ってもらうわけにもいくまい……早急に二人をこちらに戻さなければ、カタルシアお願いできるか?」
「えぇ、事が済んだら早急に取りかかるわ」
カタルシアはそう言うとにこりと微笑む。
すると、瀬津螺は立ち上がり昌音の顔を見る。
「国民には何て言うんだ」
「……ありのままを伝える、向こうにいることで民も少しは安心するだろうからな」
「……そうか」
その言葉を聞き、再び座り直すのをみて、昌音が仕切りその場は終わった。
すぐさま昌音は国民の元へと急ぎ、カタルシアは自分の部屋へと戻ろうとしたとき、瀬津螺はそれを止めた。
「……カタルシア、何考えてるんだ?」
「何も♪」
相変わらず笑顔で答えるカタルシアに瀬津螺はため息を一つ吐く。
「はぁ……カタルシアは昔と変わらないな、その左目を無くしたときも……」
そう、カタルシアは前髪を密編みにし、左目を常に隠している。
カタルシアはその言葉を聞くとまたもや微笑み、髪に指を通す。
「変わっていないのは瀬津螺じゃないの?」
「な! それはどういう意味だ! 訳がわからん!」
瀬津螺はそう言うと顔を赤らめながら、自分の部屋へと戻る。
「……やっぱり変わってないわね」
瀬津螺にバレないよう呟くと自分の部屋に戻ろうとする。
そして、振り向くとそこには先程の会議を盗み聞きしていた三人週が立っていた。
「……
……あら?」
厄介な事になりそうだと直感したカタルシアはニコニコしながら軽く会釈をして通りすぎることに。
「待って! カタルシアさん!! 無視しないで!」
「嫌ね♪ 無視しようとしたんじゃないのよ♪」
必死に腕を掴んでくる麗乱にニコニコしながら自分の部屋へと返るように麗乱をひこずる様にして移動する。
「まってー! お願い! お願いがあるの! 話だけでもー」
「……はぁ」
結局粘り勝ちで向こうに負け、話だけでも聞くことに。
カタルシアの部屋で麗乱だけ入り、後の二人は見張りをしていた。
お茶を飲みながら優雅に話を聞いているカタルシアに麗乱は身を乗り出して話を切り出す。
「カタルシアさん! 私を人間界に連れていって!」
予想は微かにしていたがあまりの図星に少し麗乱の方を見る。
「カタルシアさんは次元の波長を合わせて、繋げることが出来るのよね!?」
麗乱は目を輝かせながら質問をしてくる。
カタルシアはその威勢に負けまいと冷静さを保ったままだ。
「んー、まぁできるなら出来るけれど、帰りは?」
「何分ならもつの?」
「まぁよくいって一時間かしら……」
「それなら平気よ! ねぇ、お願い! 私もお父様の力になりたいの!」
麗乱のその言葉には裏は無いように見える。
カタルシアは少しの間考えると、ゆっくりと立ち上がる。
「……それまで言うのなら、今日早速繋げてみようかな」
「あ、ありがとう!! 私絶対あの女を捕まえて来るから!」
「まぁ、そこまで張り切らなくても良いけれど、その代わり私も着いていくわね♪」
「分かったわ!」
麗乱は了承を得たのが嬉しくてたまらないようで直ぐ様二人の元へ急いだ。
そして内心カタルシアはこう思っていた。
何だか面白いことになりそうね♪と。
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