白と黒
黒の国
「……から言ったじゃない…」
どこからか暖海の声が聞こえる……誰と話しているのだろうか?
「……ねぇだろ!」
次に聞こえるのはハリスの声、二人で口論しているように聞いて分かる。
アリアもその声を聞き、ゆっくり瞼を開けると、そこは見覚えの無い部屋だった。
フカフカのベッドにアリアは寝ており、隣からは先程聞こえていた二人の話し声が聞こえる。
「だからなんでそうなんのよ! ちょ!あ!」
「うるせぇな、黙れ」
(二人ともまた喧嘩してる! と、止めなきゃ!)
アリアはそう思い勢いよく起き上がると隣の部屋へと走る。
「二人とも、喧嘩したら……あれ?」
「あ、アリア起きた? もう大丈夫?」
「……」
なんと二人は喧嘩もしていなければTVゲームをしていた。
ハリスとアリアにとっては初めて見るもの。
だがハリスは手慣れている様にリモコンを持っている。
「あ、うん大丈夫……それ何?」
アリアも近寄りそれを見るとなんだか楽しそうだ。
「TVゲームよ♪二人ともほんと何処から来たの? TVゲーム知らないなんて……外国?」
暖海のそんな言葉にアリアはまたしてもどう答えようかと悩み始める。
「だからお前には関係ないだろ」
ボソッとハリスが言った言葉に暖海はその隙をついて先にゴールする。
「あ、お前卑怯だろ!」
「♪〜♪」
ハリスが睨み付けるのを目線を反らしてかわすと立ち上がり後ろのキッチンへと移動する。
「もー、お腹すいたし、お昼じゃん! ご飯食べよ♪」
「うん!はーちゃん良いよね?」
「……好きにしろよ」
アリアも状況がつかめないがハリスと暖海が仲良くなっているようでとても嬉しかった。
「アリア大丈夫なのか?」
「うん、昨日あんまり寝れなかったから」
「……そうか」
ハリスは暖海の手伝いをしに行ったアリアを見るとなんだか前に起きたことが夢のように思えてくる。
でもいつアイツ等が襲ってくるか分からない。
ハリスはそう思うとなかなか気が休めなかった。
―――一方ここは魔界、黒の国。
一羽の烏がカタルシアの元へと降り立つ。
カタルシアは烏の瞳を見つめ記憶を取り入れるとため息をつく。
それはデーゼの死の知らせだった。
あれからカタルシアは一度も城には帰っては居なかった、だが今日は今までに起きたことを国に知らせなければならない。
カタルシアは烏に飛び乗ると急いで城へと戻った。
城へ戻ると早速庭へと降り、中へと急ぐ。
だがそんな彼女に向かって誰かが走り寄って来る。
「カータールーシーアー!!」
「あら?」
それと共に黒い魔力の玉がカタルシアに向かって飛んでくる。
それを軽々しく避けるとカタルシアはニコリと笑みを浮かべた。
「ただいま、瀬津螺今日も元気ね♪」
後ろからは爆発音と共に爆風がカタルシアを包み込み防止を手で押さえる。
そして、彼女はカタルシアの元へとつくと声を荒げる。
「どれだけ私が心配したと思ってるんだ! 今までどこにいたんだ! 白の国へ行ったきり何も連絡は来ないし、烏はカタルシアの言うことしか聞かないし、私には何も教えてくれない……」
瀬津螺の話をさらりと聞き流しながらカタルシアは城へと足を進める。
「おい、聞いてるのか? 」
「これからその報告を国王にしようとした所よ、瀬津螺もそんなに怒らないのよ」
「な! 何かあったのか?! やっぱり」
「ちょっとややこしいことになってね♪ 烏行くわよ♪」
カタルシアの合図に烏はピクリと反応し小さくなるとカタルシアの肩にちょこんと乗る。
瀬津螺はそんな烏の姿をみるなり舌打ちをする。
「チッ! 猫かぶりな奴め」
瀬津螺は烏の事はあまり好きではなくしょっちゅう喧嘩をしている様だ。
烏に気づかれな様にボソッと言うとカタルシアの後ろに着いていく。
城の中に入り、王室まで行くとカタルシアはノックをし、返事を待つ。
「ほーい」
「昌音……今帰ったわ、報告することが山ほどあるから会議室で待ってるわね♪」
カタルシアはそう言うと会議室へと足を進め、瀬津螺も、ドア越しに早く来いよ! と告げ口すると、カタルシアと共に急いだ。
その数分後ガチャリとドアが開き、昌音が走りながらアイスを食べ、会議室へと向かっていった。
それを影から睨むものが……三人。
「聞いた? 会議室で何かあるみたいよ」
「そうですね麗乱様♪ 行ってみますか!?」
「当たり前じゃない!! 私だって国王の娘よ? この国を守らないとね♪」
「さすがわ麗乱様!!」
「素晴らしいお言葉」
三人はひそひそ話をすると、昌音に気づかれないように後をつけた。
麗乱……紫かかった藍色の髪を二つに分け編み込みをしている少女はこの国の王、昌音の一人娘だ。
国王の一人っ子、しかも女の子ということもあり、昌音は麗乱にメロメロだ。
だがそんな昌音も会議室には近寄るなと何度も言われている。
だが時々こうやって後をつけて話を聞いているのだ。
なのでアリアの事や事の詳細は麗乱も知っている。
因みに後ろについている銀色の紙の男の子は箔
緑色の髪の男の子は緑だ。
二人は麗乱の側近であり、麗乱で言う弟たちだ。
会議室に着くと三人してドアに耳を当てながら会議を聞くことにした。
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