白と黒
新しき友
結局寝付けなかったアリアはそのまま朝を迎え、眠たい目を擦りながらも水のみ場で顔を洗うと、ハリスの元へ振り返る。
だが、次の瞬間後ろから呼び止める声が聞こえ、振り返るとそこには以外な人物がいた。
一方ハリスもあまり眠っていないのか、起き上がるなり欠伸をすると、アリアの元へと急ぐ。
「おい、起きてるか?……あれ」
アリアがいるはずのドーム型の遊具の中には誰もいなかった。
(?先に起きてどっかに行ったのか?)
そう思い辺りを探すがやはりどこにもいない。
次第に焦りが出てきはじめ、公園内をくまなく探すがやはりどこにもアリアの姿は無かった。
(……もしかして元の世界に帰った? だとしたらどうやって)
そう思考を巡らせていると、不意に頭に浮かんだあの光景がフラッシュバックする。
あいつの母親がここまで来て連れ去った……俺の事が鬱陶しいならここに残しておけば話は済むことだ…。
そんな悪い予感がいつからか頭から離れなくなった。
念のためもう一度遊具に戻るがやはりアリアは居ない。
(あいつ……大丈夫なのか……)
そう思っていた時だ。
「はーちゃーん!」
ふとしたアリアの声に勢いよく振り返る。
そこには元気よく手を振りながら走ってくるアリア……と、昨日であった赤茶髪の女の子も一緒にいた。
近くに来るとアリアは思いっきり頭を下げて謝り始める。
「ご、ごめんなさい!! はーちゃん! 勝手に行動して……」
その顔を見て、安心した様に近くにあったベンチに座り込む。
「はぁ〜、なんだよその女と居たのか……あんまビックリさせんなよな……」
「ご、ごめんなさい」
だがそんな二人のやり取りを見ていた暖海が二人の間に割り込む。
「あ、あのさ! アリアは困ってたおじさんを助けて道に迷ってたの! 悪いことした訳じゃないからさ!」
「いや、そんな怒ってないから……で、なんでお前居るんだ」
「アリアを送ってきたのよ♪ 」
「私達お友達になったんだ♪」
そういうと二人でピースを決め、ハリスもそれを見て呆れ顔になりながらも話を聞くことに。
「ねぇ、あんたもさ♪これから、うちに来ない? アリアもあたしも朝御飯まだだし♪ 来なよ♪」
「遠慮しとく」
プチ!
あまりの速答っぷりに何かが暖海の中で弾けた音がした。
「何よ! 人がご飯を誘ってるって言うのにぃ!」
「……」
「なーんでシカトすんのよ!!」
「煩いな……」
「キイィ!」
「お前は駝鳥か……」
「あーー!!!!もう!腹立つ!もう誘わないし!絶対一生誘わないから!」
「……」
「キイィ!」
そういうとまたしても膨れっ面になり彼女は地団駄を踏みながら家へと帰っていく。
「は、はーちゃん……」
アリアもあまりの暖海の怒りっぷりにビックリしたのか引き留めることも出来ず、彼女の後ろ姿を見ていた。
一方のハリスはと言うと眠気もあるためかボーッと空を眺めていた。
「ここってあんまり人が来ないんだね」
アリアは周りを見渡しながらハリスの隣に座るとアリアもボーッと景色を眺める。
アリアの言う通り周りは林や木々で囲まれており、その周りには田んぼや畑が並んでいた。
確かに人通りは無いに等しいだろう。
ハリスも辺りを眺めるが全く人の通る気配がない。
「そうだな……」
アリアはそんなハリスを見てきっと疲れが貯まっているに違いないと思い、そっとしておくことに。
「あ、わ、私喉乾いちゃった……お水飲んでくるね♪」
そういうとアリアは慌てて水のみ場へと走る。
「お、おぅ」
ハリスの答えを待つ前に走り出すアリアの背中を見て、ため息が零れる。
(はぁ……俺何してんだろ……相手に気使わせて、何もできなくて)
あのときも何もできなかった。
そう思うと自分がつくづく嫌になる。
そして次に口にした言葉は重苦しい言葉だった。
(なんで、俺って存在してるんだ……)
ハリスは真っ青な空に心からそう呟いた。
一方のアリアは昨日の夢を思い出していた。
もう一人の自分……考えただけでも背中がゾクッとする。
どこも違いはしないそんな、二人の唯一の違う事と言えば瞳の色だ。
彼女はアリアのオレンジ色とはまた別の色をしていた。
それ以外何も違わない……、そんな事を思い出しながらデーゼの事もあり頭がパンク寸前だ。
母親が自分を殺す……もう一人の自分……デーゼとの別れ。
そんな事を考えながら水を飲み終わり、クルリとハリスに向き直った瞬間視界が大きく揺れた。
そのまま気づけば地面に倒れ混みアリアの視界はどんどん狭くなり、ハリスが焦って掛って来るのが目に見えた。
そして、アリアの視界は暗くなり意識も遠退いていく。
ハリスの声も届かないまま。
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