トラブルメーカー
3
「尚はこの学校の風習のことを知ってるかい?」
「風習、ですか」
「まぁ、閉鎖的な男子校だからよく男同士で付き合ったりするんだ、バイセクシュアルが多いんだけどね」
「は、はぁ」
昨日聞いたな、と尚は心で思いつつ梓のような女性のように美形な人からこんなことを言われると少し戸惑ってしまう。
それを誤魔化すように尚は紅茶を飲んだ。
「僕って、こんな容姿だろう。だからよく狙われてね。強姦まがいのこともされた」
蜂蜜色の瞳に影がかかる。
尚はえ、とカップを落としそうになった。
「ご、ご強姦?」
「そう。君も気をつけなければいけないよ。その対象になると、思うんだ」
その、と少し梓は頬を染めて尚をみた。
「君って中性的な魅力があるんだ。綺麗な顔をしているからね」
「そ、そんなこと言われたの初めてです」
かぁ、と赤くなり下を向く尚に、梓は一瞬蛇のような眼光で尚をみた。
「無自覚はいけないね。気をつけた方がいい。すぐに信用などしてはだめだからね」
尚は優しげに揺れる蜂蜜色の瞳を見てニコッと微笑んだ。
「ふぁひ」
あれ、と尚は首を傾げる。
「どうしたの?」
「ひゃらだに、ちからが…」
くらり、と前に倒れそうになったところを梓に受け止められた。
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