トラブルメーカー
照れ屋な隣人
プリプリと千葉小太郎が廊下側の前列の席へと戻っていく後ろ姿を、尚はため息をついて見ていた。
(本当に厄介なクラスメイトだ)
今朝、和田に言われた言葉を思い出す。
千葉小太郎は確かに厄介だ。
しかし、その厄介ごとに巻き込んだのは今朝尚に忠告をしてきた本人なのだ。
(都合がいいのは、和田君だけじゃないか)
和田は昔からそうだった気がする。
ほとんど覚えてない筈の昔の記憶の片隅にそんな片鱗があったような気がした。
そんなことを思いながら、尚は隣人に目をうつす。
すると、隣に座る彼の真っ黒な瞳が尚をみていた。
少し不機嫌そうな彼は、とびきりの美形とまではいかないが、共学であれば女子にそこそこモテそうな顔つきをしていた。
「ありがとう、助かったよ」
尚が嬉しそうに微笑みながら礼を言うと、彼は目を丸くして、居心地悪そうに答えた。
「災難だな、あんなやつに目つけられて」
彼はそう言うとぷい、と尚から視線を外した。
「俺は、清水尚。よろしく」
「俺は、武田光(タケダコウ)」
ぶっきらぼうにコウは自分の名前を答えた。
そして、少し考えるようにオズオズと尚に目線をうつす。
「よろしく」
顔は不機嫌なのに、コウのピアスのついた耳は赤く染まっていた。
尚は目を丸くしてコウをジッとみた。
「そんなみるんじゃねぇ」
不機嫌な真っ黒な瞳が、ギンっと鋭く音がしそうなほどに尚を睨む。
尚は周りの空気が凍ってる事にも気づかず首を傾げた。
「コウって勘違いされるタイプでしょ」
「あ?」
眉を寄せるコウに、尚はクスっと甘く笑った。
「なんとなくそう思って」
その時ちょうど担任の中年教師が中に入ってきたため、尚な前を向いた。
光は何か言いたげに尚を見たが、真剣に前を向く姿勢をみて机に突っ伏した。
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