トラブルメーカー 男子校の実態 銀縁の眼鏡の奥に見える鋭い切れ長の目。 蛇に睨まれた蛙のように、尚の身体は硬直していた。 「まーさーきぃー」 ガチャ、っと共有スペースのドアが無遠慮に開けられ、男にしては高い声が部屋に響いた。 和田はその声を聞くと整った眉を寄せて、億劫そうに、目線だけドアへと向けた。 尚は、顎を掴まれているため和田の顔から目を逸らすことが出来ない。 「消えろ」 薄い唇から出たのは、低く唸るような声。 「え、え、雅樹誰だよそいつぅー!何でそんな近いんだよ! もしかして、チュウしようとしてたの? え、まさかもうチュウしちゃったー?」 雅樹のファーストキスぅーと甲高い声が響く。 (チュウ?) なぜ男同士でのチュウ? 和田に顎を掴まれていることを忘れて、尚はキョトンとする。 その時、右腕を誰かに掴まれた。 「おい、雅樹から離れろ」 ぐいっと引っ張られて、尚は後ろによろける。 ビターチョコレート色の長めの髪に、小学生のような童顔が尚の顔を睨みつけた。 八重歯がより一層幼い雰囲気を出しているようだった。 [次へ#] [戻る] |