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狐の嫁入り


ぴちゃーん、ぴちゃーん
と、水が落ちる音で目が覚めた
目を開けると、俺は椿の花が浮いた風呂に浸かっ
ていた

「何・・・これ」
「目が覚めたようだね」

近くで聞こえた声は、さっき鳥居のところで聞い
た声だった
起き上がって辺りを見ると、すぐそばにあの男が
立っていた

「・・・あれ?」

そこに居たのは確かにさっきの男なのだが
少し違っていた

「・・・耳?それに、尻尾も・・・」
「あぁ、これか。和也が俺の名前を思い出してく
れたからね、力が戻ったんだよ」

そう言って、綺麗な黄色の尻尾を俺の前で揺らめ
かせた
そう、今この人の頭には大きな獣の耳と尾がつい
ていた・・・人間にあるはずの無いものだ

「人間じゃ・・・ない・・・?」
「そ、俺は人間じゃない。・・・怖いか?」
「少し・・・でも、あなたは『銀』なんでしょう?」

じぃ、と銀の金色の瞳を見つめる
銀は俺の手を取って微笑んだ

「そうだ・・・12年前の約束を果たしにきた」
「約・・・束・・・?」
「俺は和也を、嫁にする」
「・・・は?」





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