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真逆の言葉(2)


「僕らは二卵性双生児として生まれて、魔神の力は兄さんだけが継いだ」


つい昨日のことのように思い出せる、あの覚醒の日。そして養父の言葉。自分達双子の、出生の秘密。今になって絶望することもないけれど、やはりその衝撃は凄まじかった。

「…?なんだよ、今さら」
「僕は普通の人間であり、ストッパーだったんだよ、魔神の、兄さんの力のね」

ストッパー…?
意味が解らないと言いたげに呟く兄に、雪男はさらに言い募る。

「二卵性双生児として個々に存在はしていても、血筋を通して僕らは繋がっている。精神の根底の部分でね」
「人間としての僕の血が、兄さんの悪魔としての本性を無意識に抑制していたんだ。」

兄にはヒトで在って欲しい、
たとえ悪魔として覚醒しようともこの先も『奥村燐』として、そう在り続けて欲しいという願いに呼応するかのように。

「それを証拠に僕がこの身体になってから炎の力が強くなったんじゃない?」
「え、な…、なんでわかんだ!?」
「一目見れば解るよ。でもまだ完全じゃないみたいだね」

やはり悪魔に身を捧げてもヒトの部分は遺ってしまうようだ。
兄の能力を完全に解放する――そして魔神と渡り合える力をその身に。

「だから、これで仕上げだ」

かちり、と雪男は自身のこめかみに銃口を宛てがう。ふわりと微笑むその表情は以前と変わらぬ弟の姿のはずなのに。
初めて自分の片割れに戦慄した。
穏やかに笑む雪男と愛銃である凶器を己自身に突き付ける光景とその落差に、崩れ落ちそうになる。

「や、めろ…っ!!!!」
「今の兄さんなら心配いらない。きっとその力を受け入れられる」

その真っ直ぐすぎる心は時に脆くもあるけれど。今、彼は独りではない。支え合い、護り合い。そして奮い立たせてくれる仲間がいる。

本当は自分もそう在りたかったなんて
もう、思いはしない。

唯一、兄を護り得る手段が
自身の存在を絶つこと
そして結局一番彼の足枷になっていたのは己だったということ

これらを理解した途端、驚くほど頭がクリアになり、真っ直ぐに浮かび上がる一つの道筋が視えた



―もう、選択肢なんて存在しない。







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