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頂き物小説
ミノキさんより誕生日プレゼント
※名前は固定で"りま"です。





「う、わあ…」


開口一番に出た声は、自分のものとは思えないほどに間の抜けた、弱々しい声だった。
山のように詰まれた書類に埋もれている我が上司は憎憎しげに私を睨んだけれど、出てしまった声は口の中には戻せない。

時刻は深夜の11時と半刻すぎたところ。
ようやく自分の仕事が終わって、上司に報告がてら書類を届けようとしたのだけど――どうやら、とんだ選択ミスだったらしい。
嫌な予感に一歩後退すると、「ふうん、逃げるんだ」と小ばかにしたような声が、私の逃げ道を封鎖しに掛かる。
開け放たれたドアからは冬を思わせる冷たい風が舞い込んでくるのに、逃げられない不思議。
「えっと、あの」と言葉を濁した私に、上司――雲雀恭弥は「じゃあ、その書類から片付けてよ」と、一言。

逃げられない、と。
普段何の活躍もしない本脳が教えてくれた。

「……分かりました」

ため息混じりに呟くと、雲雀恭弥は満足げな笑みを浮かべて、再び書類に目を落とす。
嗚呼、なんて最悪。私は息をついて、とりあえず雲雀恭弥が指した書類――匣(ボックス)の情報が事細かに書かれた書類の束を、彼の横向かいにある机において、携帯しているパソコンを開く。
間抜けな指導音がして、デスクトップが立ち上がる。USBに入っているテンプレートを使おうと差し込むと、なんとも気の抜ける半音上がりの音が響いた。
別に良いけど。どうして眠い時に聞くこの音はこんなにいらいらするんだろうか。こんな時間にエラー音のボンッという音を聞いた暁には、パソコンを分投げそうな勢いだ。


「……7センチ…かあ…」

起動する間にその辺にあった定規で書類の厚みを測ると、7.3センチもあった。これが福沢諭吉だったなら、700人にもなるのに。
げんなりした私に、上司……というか、本当の言うところの『ボス』である雲雀恭弥は「うるさい」と一喝。私はもう、黙るしかない。
本当はボンゴレファミリーの一員である私だけど、雲雀恭弥の財団との接点を作ろうと配属されたいわば橋渡し役。
雲雀恭弥とは同じ中学だったし、面識もあるし(咬み殺されたという意味で)、まあなんとかやっているけど…さすがに、これはない。
時刻は夜の11時半。あと30分で、日が変わってしまう。終わってしまう。霜柱なんて東北地方ぐらいしかたたない霜月、つまりは11の月の、13日目。


「何か予定でもあったの」

時計を気にする私に気づいたのか、雲雀恭弥…嗚呼もう長ったらしい…雲雀さんが顔を上げる。
眉根にくっきり寄せられた数本のしわが、彼の不機嫌さを物語っていて、私は思わずああともうんともつかない音で言葉を濁す。
彼の眉間にしわが増え、書類の山の隙間から銀色の棒上のものが、鬱陶しいほどに照り付けてくる部屋の明かりに反射して煌く。
地上の星は綺麗だぜ!と、わざわざ写メールまで送ってくれたディーノさんの時とは違う意味で泣きそうだ。
言ってもどうせ、変わらないのに。


「…び」

「…何、はっきり言いなよ」

「22回目の誕生日だったんです。あと、30分で終わっちゃうんですけどね」


ため息をつくようにいうと、彼は「ふうん」と声を漏らして、書類の山の奥へと消えていく。
ああやっぱり。何も変わらないじゃないか。私は心の中で不満をごちながら、たたきつけるように文字を打ち込む。
0時に一緒に祝おうな。そう言ってくれたディーノさんは結局仕事で10時にロシアに飛んでいったし。
律儀すぎる彼のほかに私の誕生日を覚えていてくれる人なんていない。居たとしてもソレは一般人だったときの友達で。
ボンゴレや財団の中には一人としていやしない。…うわあ、どんだけ寂しい奴なんだろう、私。

ため息をつきながら、一枚目の書類をまとめに掛かると、不意に視線を感じて、顔を上げる。

きぃん。と、高い音が同時に響いて。空中を小さいものが放物線を描いて飛んできた。


思わず受け取ると、真ん中の宝石部分が無くなった――いや、それでもデザインと割り切れる――綺麗なリング。
先日、雲雀さんが先頭で使ったCランクのリングの残りカス。
…といっても、彼自身デザイン的には気に入っていたのか、珍しく捨てなかったリング。そんなものが、私の手の中に合った。


「あげる」

途方にくれた私に、彼の言葉が振り注ぐ。
大切なものなんじゃなかったのかとか、気に入っていたのではという問いかけをしようにも、雲雀さんがプレゼントという物を意識する人だとは思っていなくて。あまりにも驚いて、思わず言葉を忘れてしまった。
指にはめてみると、少しだけ大きい。細い割には関節ばった彼の指に丁度良いような大きさだから、まあ当たり前なんだけど。


「…ありがとう、ございます」

とりあえずお礼を言って、私は再びパソコンに向かう。その瞬間、パソコンの右下にポロロン、という音と共に新着メッセージ。
カーソルを合わせてクリックすれば、差出人は5メートルとはなれていない『雲雀恭弥』。
訝しげに開いてみて、思わず噴出す。書類の向こうで彼が「仕事しなよ」と不満を言うけれど、あまりにも可笑しすぎて、涙が出た。


だって。だって。そうでしょ。



『おめでとう、りま』



心なしか頬に熱を感じたのは、とりあえずは気のせいということにしておこうか。

(認めるのも、何だか癪だもの)

*******************

Ti voglio bene.のミノキさんに頂きました誕生日プレゼントです。

ミっミノっ!!ミノキさんの素敵小説…!!
りま限定ですよ!?かなりの希少です…よ!
それも聞いて下さい、お話と同じ時刻にメールが来たのです…もう涙で途中で視界が歪みました(リアル

それにこのお話、私の大好きな大人雲雀さんがお相手です。
大人雲雀さんが指輪くれて、おめでとうって言ってくれて…え、これって結婚を前提にお付き合いってことでOKですよね?
いや、むしろミノキさんのところに嫁ぎます。

本当にありがとうございました!!
大好きですv

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