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頂き物小説
口稚拙な恋愛

よくある話で“喧嘩する程仲が良い”なんて誰が言い始めたのだろう。


「おい、バカ女!!てめぇ何しやがんだ!!」

「ちょっ。バカでかい声出さないでよ!アホ寺!!」


朝早くからもう日課と化している獄寺とユキナの喧嘩(?)が始まる。事の発端はいつも些細な事なのにこの2人からしてみれば、大きな問題なのだ。

何かとつっかかり合いが始まったのは極寺が転校してきてごく最近の事。原因は何だったか。もう遠い記憶になっていた。


「だいたいねぇ、あんた中学生のくせに何活きに煙草吸ってんのよ。くっさーい!」


「あぁ!?うるせぇ、ブス女!!吸おうが、吸わまいが俺の勝手だ!」


一向に止むことのない言い合いに溜め息を吐きながらその状況をツナは眺めていた。


するといきなり教室のドアが勢いよく開き、反射的にクラス中(2人を除く)の視線がドアに集まった。


「がははは!ランボさん登場だもんねぇ―!」


「コラッ。ランボ駄目!!」





ドアの外に居たのは、がはははと笑うランボとあたふたとしているイーピンで流石に言い合いをしていた2人もそちらに顔を向ける。

「ちょっ!ランボにイーピン、お前ら何しに来てんだよ。」


突然のランボ達の登場にクラスはざわめき始め、ツナは顔を真っ赤にしてランボ達を抱えて教室を出ていってしまった。



「オイ!アホ牛。てめぇ十代目の邪魔しに来てんじゃねぇよ!」

教室を後にして誰もいない屋上へと場所を移す。ツナかランボに問うよりも先に極寺が怒声を飛ばした。

勿論怒声を浴びた事の犯人ランボは大声を上げ泣き始める。


「ちょっと、獄寺!!小さい子にそんなキツい口調で怒ったら駄目じゃない!少しは接し方考えなさいよ。」


「うるせぇっ、このクソ女!!毎回毎回俺に指図すんな!」


ギャーギャーとまた言い合いを始めた時、泣きじゃくっていたランボが10年バズーカを取り出し、打つ。


ボンッという爆音と白煙が漂い始めたと同時に2人の声が聞こえなくなった。

ツナ達が煙にむせながらも、目を凝らしたがそこには2人の姿はなく泣きじゃくるランボと故障した10年バズーカが転がっていた。







「ゲホッ、ゲホ……ッ!!こんのアホ牛!!てめッ……ぇ?」


怒りの矛先を向けようとその姿を探そうとしたが、その前に自分を取り巻く風景に目を疑う。どうやら辺りを見る限り公園の様だ。


グイッと下に引力を感じ、視線を向けるとどっかの幼稚園の制服を着た女の子が立っていた。


「お兄ちゃん何してるの?」


「!!あ、散歩だよ、散歩。」


適当に答えれば、チラリと肩に掛けられている黄色い鞄の刺繍に目がとまる。


“ユキナ”


(“ユキナ”って確かあのバカ女の名前じゃ…)

まさかこんな偶然。

(というかアイツにもこんな時が…。時間て恐ろしいぜ。)


ぼーっとしている獄寺に少女は不思議そうな顔をしていたが、何かを思いついたように問うた。

「ねぇねぇ、お兄ちゃん好きな人いるの?」

確か鮮明に覚えているのはツナ達と屋上に居た所まで。だが、目の前に広がる景色は屋上から見えるものとは全く異なったもので、大きな城が建っているのが見える。
若干これは不法侵入にならないのか。ぼーっと突っ立っていると、

「ぎゃぁ!!」

「ぐはッ。」


ドゴォっと下半身に衝撃があり、辺りに変な男の子の叫び声と自分の声が混ざる。


当たった所を擦りながら、衝撃を感じた方へ顔を向ける。


「…痛ってぇなぁ。って誰だよ!お前!」

ぶつかって来た少年は整った顔を歪ませながら、ゆっくりと上体を起こす。


(…なんか獄寺隼人に似てる。というか本人??)


そんなことを考えていると、後ろから隼人―!と呼ぶ声がする。何だやっぱり獄寺かと思えば、


「わぁ!!や、ヤバいッ!姉貴が来る。オイ!ちょっとこい!!」

「え。おわぁ!」


小さな手に引っ張られ、近くの草むらに隠れさせられる。声の主が通り過ぎたのを確認しふと横にいる少年に視線を向けた。








「へぇー。10年前の獄寺隼人がこんなにも可愛いやつだったとは微塵も思わなかったわ。…口が悪いのはそのまんまだけどね。」


「??いきなり何言ってんだよ、お前。不法侵入者だろ。」


「え!!っとぉ…じゅ、10年後の君の。君の……友人だよ!うん」


あぁ、こんな事言って信じてくれるのだろうか。

(てか友人ッて。獄寺とあたしって友人?喧嘩仲間??)


「…!!お前が10年後の俺の知り合い??…スゲェ!!なぁ、10年後の俺強いのか!?」


(あ、単純だなオイ)


「…うーん。強いかは分からないけど、そういうのより性格に問題有りかな。」


目をキラキラとさせて子犬のようだった顔が次第に暗くなる。

「…何か俺格好悪い。」


「はは。でも、良いやつだよ。」


ニッコリと笑って答えれば、どっちだよ。と返されてしまった。


「まぁ。納得がいかないなら、10年待ちなよ。」


ね。っと言えば少年は不貞腐れたような顔でこちらを見た。それを横目にそろそろ時間だと言って、少年にお別れの言葉を囁いた。

「す、好きなやつだと?」


(意外とませてんな、こいつ)


「ねぇ、いるの?いないの?」


「あぁ―。居ねぇよ。んなもん。」


興味なさそうに答えれば、つまらなさそうな顔をされた。


「……。でも、気になるっつーか。いつもつっかかってくるムカつく女がいる…って、俺は何話してんだ。」


ガシガシと頭をかき、少女を見る。

「ふぅーん。あッ。あのね、ユキナね、明日ユリ組のかずき君と結婚式挙げるのー。お兄ちゃんも祝福してね!」

無邪気な笑顔で唐突に言うユキナにブッと噴き出してしまった。

「そりゃ、良かったな。でも、その結婚式は無意味だぜ?」


意地悪く言えば、少女はなんでよ―!!っと怒り出す。


「今答えを言うのは面白くねぇからな。まぁ、それなりに時間はあっという間に過ぎてくぜ?」


不満そうな少女にニッと笑い、耳元で囁いた。







「「10年後で待ってる。」」










ボスンっと音がして視界に広がるのは見慣れた風景。


「「戻った。」」


綺麗にはもった声の主達はお互いに見て、ブッと噴き出す。


(10年前の獄寺隼人は弱虫でアホだった。)

(10年前のお前はませガキだった。)


稚拙な恋愛。


私たちに大人の恋愛なんてまだまだ先の話。




fin

*******************

white puzzleの汐春雫様より、キリバンリクエストをした作品です。
私がリクエストしたのは「獄寺夢/喧嘩するほど仲が良い/糖度20%のツンデレ」という何とも面倒なテーマをお願いしてしまったのですが、汐春雫様はこんな素敵な作品にしてくださりましたよ…!!

素敵なお話、どうもありがとうございました!!

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