つぼみの花 怪しい雲行き 俺とマヒロ、そして獄寺くんはランボのバズーカを受けて未来へとやってきてしまった。 獄寺くんとは逸れずに済んだけど、マヒロがいない。 10年後のマヒロと入れ替わっているはずだから、未来の彼女がいた場所に飛ばされているはず。 急いで彼女の居場所を探そうと駈け出したが、ラルに首根っこ掴まれて止められた。(体勢が整っていないのにむやみに動くと逆に俺たちも危ない目にあう可能性があるから、だと彼女は言った)(でも、彼女が危ない目にあっているかもしれないのに何もしないなんて!!) 二人に説き伏せられて、俺は渋々ボンゴレのアジトへと向かうことになる。 どうやら平穏とは言えない環境になってしまった並盛町のどこかに、彼女は無事でいるのだろうか…。 「おせぇーぞ」 扉を開けると懐かしい気の抜けた声がする。 それと同時に口頭部への激しい痛み。 相変わらずのふざけた再会だよ…!! でもやっと見つかった… 戻ってこなかったらどうしようかと思うと本当に辛かった。 心の中で安堵し、張りつめていた緊張が少しほぐれたような気がする。 リボーンに俺たちがどうして飛ばされたかなどの状況を話すと、彼は小さく舌打ちをした。 「真尋もこちらに飛ばされたのか…この状況最悪だな」 ゾクリ。 毛穴という毛穴が開き、嫌な汗を流しながら思わず身を竦ませた。 どうか。 どうか。 無事でいてくれ…!!! ――マヒロ!!! *** 綱吉に呼ばれた気がして、重い瞼をこじ開けた。 視界にまず飛び込んできたのは豪勢なシャンデリア。 自分の置かれた状況に頭が追い付かず、まず記憶を辿ることから始める。 そう、私は先ほどまでリボーンくんを探していて、そして綱吉の家で――。 頭にかかっていた靄が一気に晴れて、私は飛び起きた。 「じゅ…っ10年バズ「あら、起きたのね」 蔦が絡み合った形が丁寧に掘られた扉が開かれ、入ってきたのは忘れもしない女の子だった。 唾を呑み込み、少し後ずさりをする。(ここでやっと私は無駄に広いベッドに寝かされていたことに気づいた) 「急に体が小さくなったものだからビックリしたわ。お目覚めに紅茶はいかがかしら、小さな真尋?」 彼女は慣れた手つきで彼女はポットからカップへと茶色の液体を注ぎ込んだ。 風に乗って香りが私の鼻先まで届く。 「一体どうして私はここにいるの?教えてちょうだい…マリア」 彼女は私が会った時と変わらずの笑顔でゆっくり微笑みかけた。 その頬笑みは妖艶で美しいが、やはりあの戦いでの恐怖を思い出すと身震いが止まらない。 彼女の細く白い手が私の頬に触れようとした、その時。 大きな音と共に扉が粉々に砕け散った。(破片がベッドのすぐ横まで吹っ飛んできた) 「極限に大丈夫かっ、井ノ原――っっ!!!」 京子のお兄さんが突然現れたかと思えば、彼はそのままの勢いでベッドまで突進。 私の肩を痛いくらいに掴んで、ガクガクと揺さぶった。 これは下手な遊園地にある絶叫マシーンよりも揺れが激しい。 私は揺れる視界と、目が回る気持ち悪さと戦いながらなんとか声を振り絞った。 「だっだだ大丈夫ですから!はなっ…離してぇー!!」 ・ ・ ・ やっと笹川先輩の怒涛の攻撃も収まり、横でマリアが"野蛮な方ね"と私の顔に飛んだ唾を一生懸命に拭きながら彼を非難した。 彼らの話を聞くとどうやら本当にここは未来らしく、この時代の私と笹川先輩はヴァリアーに出向いていたのだという。 ミルフィオーレによるボンゴレ狩り。 未来の綱吉の死。 壊滅状態のイタリア ボンゴレ本部。 急な話すぎて私は頭が混乱した。 …綱吉が死んだなんてつまらない冗談なんてやめてよ…。 「残念だが、これは現実だ。受け止めろ、井ノ原」 やめて。 やめてよ。 そんなこと言わないで。 「私たちは重大な分岐点の前に立っているわ」 "ボンゴレが滅ぶか、生き残るか――それは" 急にそんなこと言われても 何を決断すればいいと言うのよ 「おまえたち」 「そう、あたなたち」 "ボンゴレリングを持って過去から来た者に、この先のボンゴレの行く末が委ねられたのだから" 空はどんよりとした曇り空。 雲行きは怪しい。 [*前へ][次へ#] |